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「それで？街中で戦ったんですか？」
「…」
俺は(これからの一人称にしよう)あの騒動の場に来た軍警察と､何故かいたガラヴァ中将が入ってきた｡
倒れている男たちと､謝り続ける男を軍警察は連れて行き､俺はヴィリス達と別れガラヴァ中将と共に軍本部へと向かった｡
あの時､どうしても皆の顔を見ることは出来なかった｡
そして､今は談話室であろう場所で1対1で話している｡
「隠さなくても､ここは私と君しかいない｡あの時思っていた事を､君の"言語"で話せばいい」
『…分かるのか』
『勿論｡言語に関して私の右に出る者はいないからね』
俺と中将が話しているのは､θ国の王族に伝わる古い言葉｡
何故か､城にいた奴らはこの言葉しか話さなかった｡
『それで､何があったんです？』
『…先に席に着いていた｡けど､あの男たちが譲れと言ってきた』
『ふむ､それで？』
『…家族､と言っていいのか分からないけど､彼らを傷付けようとした｡それを見て､心臓辺りが焼けるような感覚がした』
今でも鮮明に思い出せる｡
ヴィリスを罵倒された時､鬱が胸ぐらを掴まれた時｡
身の内が冷めていくような感覚と､血が熱くなっていく感覚｡
どれも､初めてのものだった｡
『それは"怒り"でしょう』
『…怒り』
『えぇ｡基本的に人には､喜怒哀楽という感情が備わっています｡君はそこらに疎いでしょうから､分かりずらいかと思いますけどね』
『…』
『…まあ､個人的意見ですが｡大切なものを奪われた時､傷付けられた時､怒りは湧き上がる』
その言葉が､ストン､と胸に落ちる｡
なら､俺は､ヴィリスと鬱が傷付けられたから､
"怒った"のか｡
『それを制御しきらなければ､君はまた誰かを傷付ける｡戦場で生きていた時のような､人形に君は戻りたいのですか？』
『…守る為ならば厭わない｡元より､俺はその為の人形だった』
「…先は長そうですね…」
『なんだ』
『いえ､何も』
そして､ガラヴァは俺にここに待機するよう言って部屋を出た｡
音のしない部屋の中で､俺は左手を見る｡
殴った時の衝撃だろうか､少しへこんでいるように感じる｡
今付けているのは､ヴィリスから貰ったものだ｡
戦場で付けていた義肢は､置いてきている｡
もし､アレで男たちを殴って蹴っていたら｡
きっと男たちはあの傷では済まなかった｡
最悪､死んでいたかもしれない｡
そう考えても､俺は何も感じない｡
あぁ､そうか
俺は､彼らとはいてはいけない
だって､殺戮人形なんだから
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
