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新しく家族になったギギと言う子は､何となく俺に似ていた｡
あの子の目は戦場に出ていた人間の目だ｡
俺は､姉さんに会う前まで戦場に出て敵を殺していた｡
辛かったけど､途中から何も感じなくなったのを覚えている｡
でも､ちゃんと戻ってきたんだ｡
けどあの子は､まず"与えられなかった"んだと思う｡
だから､今あの子自身､起きている事が分からない｡
「…どうしたの？」
「あ､軍曹…！ギギが､泣き出して…」
「どうした､どっか痛いんか？」
「…」
ショッピがギギをしゃがませ､その頭を懸命に撫でて落ち着かせようとしている｡
チーノに事情を聞けば､クルトの大声に驚いていたらギギが慰めてくれたのかギギが｢大丈夫｣と話したらしい｡
そしたら､泣き出してしまったと｡
「…多分､ギギは､昔の事を思い出しちゃったんじゃない？」
「昔…？」
膝に顎を乗せるような形でしゃがみ込んでいるギギの手をショッピが繋ぎ止めるように握っている｡
ショッピも成長したんだな､と嬉しく思いながらチーノの背中を押しながらギギに話しかける｡
「ギギ」
「…ぐん､そ…」
反転した瞳からは絶えず大粒の涙が溢れ続けていた｡
本人も､やはり何が起きているのか分からない､という顔でこちらを見上げていた｡
「…辛い？ここ､苦しい？」
「…ｺｸﾝ」
ギギの隣に膝をつき､自身の胸を指してギギに問うと､ギギは頷く｡
ソレの名前は分からずとも､感じることができる余裕はまだ残ってくれていたようだった｡
「ギギそれはね､"悲しい"って言うんだと思う｣
「…かな､しぃ…」
「そう､悲しい｡例えば､自分の好きな人とか､大切な人が傷付いたり､苦しんでいたら､感じるものなんだ」
「…かなし､い…？」
涙を拭いながら語りかけると､不思議そうな顔でオウム返しをするギギ｡
それが､年相応に見えて嬉しくなった｡
「大丈夫､それは普通の事なんだよ｡俺もここで過ごして分かったけどね､極々､普通の事なの｣
頭を撫でると､僅かに目を伏せるギギ｡
どこかほっとしたような､納得したような表情に見えた｡
「…さ､ご飯食べよ？みんな待ってる」
「…､ん…」
「チーノもショッピもありがとね」
「ふーん！当たり前やで！」
「ギギは俺らの弟だから､普通やし」
2人の頭を撫でてやると､まるで子犬のように体をソワソワさせる2人｡
やっぱり､弟って言うのは可愛いものだ｡
ここに来て､本当にそう思う｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
