こゝろ：1 ページ12
sideｰVirｰ
「ヴィリス､」
いつもの席につこうと皆に伝えようとして､クルトに声を掛けられ体が固まる｡
滅多に怒る事の無い､あのクルトが怒っている｡
顔は険しく､声は一段と低い｡
「ど､どうしたんだ､クルト」
「ギギの事ですが､以前まで何を食べていたかご存知で？」
あ､これブチギレてるやつだ←
「いや､そこは何も聞いていない｡だが…」
「だが､何です？」
「…保護した時､背中に刺青があった｡θの､捨て駒の意味の､」
「クソッタレが！！！！！」
クルトが大きく叫ぶと､その場にいた全員がこちらを向く｡
止めろクルト､皆が怯えてるだろ｡
「初めに言ってくださいそう言う大事なの！ちゃんとした食事をした事無い子にいきなり重いもの食べさせる所だったじゃないか！！ギギの体調が崩れたらどうするんだ！？」
「…すまない､」
「僕じゃなくて！ギギに言いなさい！」
そう言ってクルトは荒々しく調理場の扉を開けて中に入っていった｡
確かに､伝えなければいけない事柄だった｡
名前もそうだし､最近抜けてしまっている｡
「ね､姉さん？どないしたん？」
「…いや､私が悪かったみたいだよ､ゾム」
傍にいたゾムが心配そうに見上げてくる｡
苦笑いをしながら頭を撫でると､心配そうな顔のまま撫でられてくれた｡
いや､本当にすまない､ギギ｡
「…クルト､どうしたんやろ…」
いきなり叫んだクルトは､ヴィリスに対して捲し立てた後､調理場に消えていった｡
大声を聞いた為か､チーノとショッピが少し震えていた｡
「…ち､ーの､しょ､っぴ」
「「？」」
「だい､しょうぶ､だ､いじょ､うぶ」
前の､隊長がたまにこうしてくれていた｡
夜､戦場は寒くなる｡
自分たちには防寒具みたいなものは渡されないから､身を寄せあって暖を取っていた｡
自分は1番小さくて､体温が低かったから､毎度変わる隊長が､抱き上げて温めてくれた｡
『大丈夫大丈夫､お前はーーーー｡俺らがいるからな｡こうしてれば温かいだろう？』
『…』
彼らの､心臓の音を聞くと､何故か安心した｡
いつも､取り残される自分を､兵士達は"死神"と呼んだ｡
でも､自分と同じ隊に入った彼らは､自分を見て
"希望"と呼んだ｡
それがどうしてか､何故そう呼んだのか､今では聞くことすら出来ない｡
もう､いないから｡
「ギギ､泣いてんか？」
「…？」
「…分からへん？泣くって､ココが辛くてナミダが出るんよ」
チーノが胸の辺りと頬を指差す｡
頬に触れると､水が流れていた｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
