02 短い髪 ページ2
「じゃあとりあえず前払い金として100万円、お願いします」
「……え?」
「ないのですか?」
見た目が10万程度のはした金の彼女は完全に金などなかった。
完全に声が出せなくなり青ざめた彼女にこう言う。
「どうしますか?…内臓を売ったりすればこれくらいなら、大丈夫じゃないですか?」
……借金をしなくても。
性が悪い俺は口をニヤつかせながら言う。
これで、彼女は内臓を売りに行くか媚びるはずだった。
「……じゃあ、これだったらどうですか?」
彼女の髪は金髪で腰までくる位の長さだ。
……とても綺麗だ。売っても金になる位に。
じゃきり
綺麗な髪の毛は、その音と共に切り落とされた。
「……いいですね。最高です」
「後、これでいいですか?」
彼女が差し出したのは金色の髪の毛と10万円ほどが入った封筒。これはこれで十分満足だが、面白くない。
「これと保険代金が必要なんだですよ〜。捕まったり、死んだときの為に」
「ど、どうすれば……」
「じゃあ、君、俺の仲間になってよ」
「え」
面白い。ただそれだけだ。
名前も知らない短髪になった金髪少女を見たくなった。
それも、きっと有り。
だって、追い詰められて髪を切るなんて面白いだろう?
「そうすれば依頼は…」
「勿論、こなすよ。200万円は…君自身って事で」
「分かりました」
そう、即答する彼女。
凄い人、だね。
「名前。まだ聞いていない」
「…響ナツメ」
「ああ、生放送で活躍してて今は96猫で活躍してる?」
「はい。そっちは」
「A。96って呼んでもいい?」
「別に。街中で呼ばれても困るけど」それくらいは別に分かるし!因みにAが本当の名前じゃないこと言うの忘れてた」
「本当の名前は?」
「未だ教えなーい」
「酷っ」
「それが暗殺者、でしょ。あ、お茶入れてくるね」
そう言って台所に行く。
俺は二つマグカップを持って96の所に置いた。
「ありがとう」
彼女は礼儀正しくわざわざ挨拶してから紅茶を飲む。
「あちっ」
「もしかして96は熱いの苦手?」
ふーふーと紅茶を覚ましながら飲もうとする彼女に聞く。
「うんっ」
「なにそれ」
笑いながら答えた彼女は警戒心の欠片もなくなっていた。
普通では考えられない早さの慣れだ。
「96ってさ絶対短い方が似合ってるよ」
「え?そう?」
「うん。絶対に」
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作者名：たう | 作成日時：2014年12月29日 18時
