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& ページ18

俺の、好きな人の、山田でも、それは例外じゃなかった。


それから色々あって、大学の友達だった人と、付き合うようになった。
本当に優しくて、最初は何に対しても怖がってた俺を、あきれずに付き合って、ほぐしてくれて。
キスをする時も、抱かれる時も、心も体も全部、彼のものだった。


だから、殴られ始めても、なんにも言えなくて。
むしろ、求められてることに喜びさえ感じた。
そんなの間違ってるって自分でわかってる。でも、たとえ暴力って手段でも、自分が誰かに求められているのが嬉しかった。







山田の声が出なくなった、あの日。
山田に、寂しいからだよって教えてあげた、あの日。
それだけ、山田にとって、山田の大切だった人が必要な存在だったってことを知った。
俺じゃあ、代わりにならないけど。
声が出ないんじゃファンの子には声かけらんないし、処理に困るでしょ?
処理をするなら、俺でも変わらないかなって思ったから、山田の家に住み着くようになった。


こんなに穏やかな暮らしをしたのは久しぶりで、とっても楽しかった。
楽しかったけど、そんな俺を現実に引き戻すメールは、すぐに来てしまって。


恋人に呼び出されたから行くと、久々だったからか、いつもより多く殴られた。
山田の家に帰るのもやっとで、ソファに倒れ込んで目を閉じて、次目を開けたら薮に怒鳴られた。


わかってるよ、こんなことやめなきゃいけないの、自分が一番わかってる。



でもやっぱり、恋人のことを、捨てられなくて、やめられなくて、


山田への恋心と、恋人への執着と、体への負担と、仕事への負担と、


全部抱えた俺は、どうやら気が付かないうちに、何もかも限界を迎えていたようで。



うまく、笑えなくなった。

殴られて痛くても、声を上げられなくなった。

恋人の一挙一動に、敏感に反応することができなくなった。

何をされても、どこを触られても、勃たなくなった。

まるで、恋人を拒絶しているかのように。
まるで、行為自体を、嫌ってしまったかのように。



ああ、俺の利用価値はもうなくなってしまったのだと、
そんな俺を抱きしめてくれた山田も、きっともうすぐ俺を拒絶しはじめるのだろうと、そう思った。

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大山翔やん(プロフ) - 初めて酢雨さんの小説読みました。このお話素晴らしすぎます。途中泣きそうになりました。 (2017年7月27日 17時) (レス) id: 02797e3c1f (このIDを非表示/違反報告)
ちょっきん(プロフ) - 酢雨さま。完結おめでとうございます。始まった時からこのお話が大好きで、ずっと読ませていただいていました!最後はハッピーエンドで安心しました。素敵なお話ありがとうございました!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: b9d9179b71 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - 完結おめでとう!&お疲れ様です!影ながらずっと読ませていただいてました。とても素敵なお話でした! (2017年7月26日 0時) (レス) id: adf1c6e9c9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - このお話大好きです。続きも楽しみにしてます! (2017年5月31日 21時) (レス) id: 1d0093e1d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酢雨 | 作成日時:2017年5月11日 18時

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