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｢その手紙は、誰に向けたものなんだ?｣
｢……大切な人です｣
｢……そうか｣
大切な人……それは大まかな関係であってどの位置に値するのかは分からない。
Aがそういう時、やや儚げな表情を浮かべた。
彼は再び窓の外へ視線を向けてこれ以上は流石に教えられないようだ。
少しばかり気まずい空気が車内に流れた。
｢そういえばですが、鯉登さん｣
｢……音之進って呼んでくれてもいいぞ｣
｢鯉登さん｣
｢ｷｴ｣
Aは少し微笑んだ。
車窓から差す光が上半身を照らし、Aは逆光の中鯉登を優しく見つめる。
｢これから二人きりの時は、自分のことは与田賀ではなくAって呼んでください｣
この瞬間だけ、鯉登は何だか全てがスローモーションの、まるで活動写真ように感じた。
｢──A｣
……初めて呼び捨てにした。
・
やっぱいこんしは愛らしかしじゃ。
昨日からどうしても忘れられなかった。
鯉登は脳裏に焼き付いた、逆光の中で微笑むAの姿を思い出した。
銀色の髪はまるで高級な絹のように美しい。
声はまるで小鳥の囀りのように可愛らしい。
そして──淡い紫の瞳。
あの不思議でどこか妖しげな丸い双眸に見つめられると、思わず息が止まりそうになる。
しかし鯉登はそんな可愛い彼にある嘘をついてしまった。
『……そういえば、他にもお前に聞きたいことがあったな』
『え?何ですか?』
『ふむ……忘れた』
本当は忘れてなんかいない。
“お前は、本当は男じゃないんだろう?”と。
しかし、Aの中でそれについて葛藤があるのならわざわざ聞くのは寧ろ失礼というものだ。
手紙の話をした時に儚げに微笑んだ時、少し心のどこかで何かが引っかかった。
大切な人、と頭の中でそれだけを何度も反芻する。
Aには大切な人がいる、しかしどうしても、その大切な人よりも彼についてもっと知りたいのだ。
その愛らしい容姿だけでなく、もっと、Aという人間として。
……おいもあたん大切なしになれんじゃろうか?
気持ちはだんだん確信へと変わっていった。
しかしそんな言葉も声に出せないまま、彼……否、彼女を見つめて複雑な感情を抱くだけだった。
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セミ⭐︎ - 勿論です！杉元やゲンジロちゃんとの絡み楽しみにしております！無理せず頑張ってください！応援しています！ (3月21日 17時) (
レス) @page38 id: 31ded6a35d (このIDを非表示/違反報告)
＊泡沫＊(プロフ) - セミ⭐︎さん» コメントありがとうございます!私も結構箱推しなところもあるのですが杉本や月島さん、ゲンジロちゃんが活躍する回は特に好きです。作品が良い結末となるようこれからも精進いたしますのでぜひよろしくお願いします! (3月21日 15時) (レス) id: 5b050bb58b (このIDを非表示/違反報告)
セミ⭐︎ - やばいめちゃめちゃ好きです！この作品が尊いです！ところで、泡沫さんの推しは誰ですか？自分は、かなり多いのですがその中でもトップを飾るのは尾形と杉元です！更新お待ちしております！ありがとう！！ (3月20日 15時) (レス) @page38 id: 31ded6a35d (このIDを非表示/違反報告)
＊泡沫＊(プロフ) - 【作者より 読者の皆様へ】『夜鷹の桜』を読んで下さりありがとうございます!まだ未定ではありますが新たに小説を別ジャンルで書きたいなと考えております。また詳細が決まり次第改めてお知らせさせていただきますので気長にお待ちいただけると幸いです! (3月18日 5時) (レス) id: 5b050bb58b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊泡沫＊ | 作成日時：2024年1月7日 6時
