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二年後 ページ39

まふまふside


「…すみません、157号室ってどこですか?」

大きな院内に入ると、消毒の匂いが鼻をついた。
カウンターに座ってる看護師さんは僕を見ると、「あぁ」とにこっと笑った。

「真冬くん…だったよね。少し待っててね、私も今から行くところだから。」
「…はい、わかりました。」

僕は言われた通りおとなしく待つことにする。
まぁただ突っ立っているのも何なので近くにあったクッション製の椅子に座っておく。



Aが、幸助さんと一緒に落ちてから、2年近く経つ。



幸い二人とも一命をとりとめたものの、幸助さんは一番重傷で今でもICUにいる。
後遺症が残るらしく、少し可哀想なのかもしれない。

だけど、僕には幸助さんを可哀想に思う余裕なんてこれっぽっちもありはしなかった。


巻き添えにされたAは、まだ意識を取り戻せずにベッドで眠ったままなのだから。


「…っ、A…」

二年前から、ずっと頭から離れない。
落ちていくAと、それに手を伸ばす自分の手の無力さ。

昨日も、一昨日も、こうやって毎日病院に足を運ぶ。
一日中病室に入り浸ることだってある。

たまにそらるさんや浦島坂田船のみんなも来てくれたりして、
Aが目を覚ましたら何をしたいか、とか
今日はAにいいもの買ってきたよ、とか。

それでも…

「…ゆくん、真冬くん。大丈夫?」
「っあ、すみません、大丈夫です。ちょっとぼーっとしてて…」

へらっと笑ってそう言う。看護師さんは「そう?」と心配そうに僕を見て、
ガラガラとワゴンを引いて廊下を歩きだした。
僕もついて歩く。

長い廊下を歩いて、いちばん奥の病室にたどり着いた。
カラカラと病室のドアを開けると、見慣れた風景が目に映る。


「……今日も来たよ、A」


白いベッドに寝て、たくさんの管につながれたAを無機質な蛍光灯が照らす。
小さい頭をそっと撫でながら、伸びた髪を梳く。

睫毛長いなぁ…

「今日ね、Aにプレゼント買ってきたんだよ。
 Iuzってわかる?僕の友達が選んでくれたんだけど、どうかなぁ…」

一人でしゃべりながらバッグからおもむろに白いブランド物の箱を取り出す。
箱の中には、ピアスとネックレスが入ってる。

「ね、可愛くない?Aがピアスしてるとこ見てみたいなぁって」

そこまで言って、途端に悲しくなってくる。
Aの胸元にぽふっと顔を埋めて、呟く。



「…ね、A…僕、いつまで待てばいい…?」

許して、放して、助けて→←さよなら、だいすきな人。



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設定タグ:まふまふ , 恋愛 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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夕焼涙雫(プロフ) - 栗原 真白さん» 面白かったですよいー(*ゝω・*) (2018年9月23日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - 夕焼涙雫さん» ほ、ほんとですか…?!嬉しいです、ありがとです…!! (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - Canpasuーキャンーさん» ありがとうございます(*>ω<*) (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
夕焼涙雫(プロフ) - 完結じゃー!時間がある時(=休日)に読み返そう (2018年9月20日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
Canpasuーキャンー(プロフ) - 完結(?)お疲れさま!そらるさんの次回作、楽しみにしてるよ! (2018年9月19日 20時) (レス) id: 1cab1691ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青瀬真白 | 作成日時:2018年6月26日 6時

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