お返し ページ47
デザートのケーキも食べ終わった私たち。そろそろお暇しようかと準備していた時。
「あれ？」
千羅さんが手元の何かを見て首を傾げていた。その理由に心当たりがある私はソワソワする。
「マスター、これ間違ってません？」
「間違ってねぇぞ」
「いやでも…」
「うふふ」
「奥さん、何か知ってるんですか？」
「うふふ、私から言っちゃって大丈夫？」
『はい』
「実はさっきAさんからお願いされたのよ」
今までデートの度に千羅さんに食事代を払ってもらっていた。いつか絶対に払うぞ、と心に決めていたがタイミングが掴めなかった。そして今日こそはと意気込んで来たのだ。お昼はうっかり財布を持たずに席を外してしまったが、逆にそれが頭に残り、先程無事にミッションを達成することができたのだ。
「全額とはいわないけど、一部は支払わせてほしいって」
「Aちゃん…」
「事情を聞いたらいじらしい理由じゃない。だからつい一部ならって受け取っちゃったのよ」
「学生さんからすると2人分全額は厳しいからな、うちは」
『勝手にすみません、千羅さん。でも今日しかないと思って…！』
千羅さんは少しポカンとした後、大声で笑い出した。一頻り笑った後、目尻に浮かんだ涙を拭ってから千羅さんは笑顔でこう言った。
「いやぁ、こんなサプライズのお返しがあるとは思ってませんでしたわ。Aちゃん、ずっと気にしてくれてはったんですね」
『はい…』
「ああいや落ち込まんでください。律儀やなぁと改めて思っただけですよ」
ありがとう、と優しく微笑んでくれた千羅さんにホッとする。実は全額払うと言った時にマスターから「全額払うと自分に甲斐性が無いのかと落ち込む奴もいるから一部だけ受け取る」とアドバイスを貰ったのだ。
「男は見栄っ張りだからな。好きな女の前では格好つけたいもんだ」
「あらあら、そうなんですか？」
「…勿論だ」
照れる旦那さんと無邪気に笑みを浮かべる奥様。お2人とも幸せそうで、この2人の言うことなら信じられると思い、アドバイス通りにお支払いをさせてもらった。その光景を脳裏に思い出した私はつい頬を緩める。
『私もいつかマスター達のようなご夫婦になりたいです。…千羅さん、今日はここに連れてきて頂きありがとうございました』
「僕もお二人みたいな夫婦が理想なんですよ。Aちゃんもそう思ってくれたなら嬉しいですわ」
素敵な出会いを作ってくれた千羅さんに感謝を伝え、私たちは微笑み合うのだった。
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妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
