怖くない ページ17
私は自分が興奮していることを自覚しながら、言葉を紡ぎ続ける。
『全国ツアーを行うという事は、千羅さん達のファンが全国にいるということですよね！…凄い、頑張ってください！』
まるで自分の事のようで嬉しくなってしまい、頬が緩むのを感じる。
『凄いなあ…』
千羅さんの驚いている顔を見ながら、ふにゃりと笑う。こういう時、咄嗟の語彙力が足りない自分が悔しいが、姉も親友も「言葉が無くても気持ちは十分過ぎるほど伝わっている」と言われるので、少しでも千羅さんに伝わっていたら嬉しく思う。
「…はあーーー」
だけど、千羅さんは何故か大きく溜め息をついて俯いてしまったまま、ピクリとも動かない。心配になって思わず腕を伸ばすと、その手を取られ、強い力で引き寄せられた。
『せ、千羅さん？！』
「…もうアカン。ほんまAちゃんは俺をどうしたいん？」
『え？え？』
ぎゅうぎゅうと締め付けられて、私は自分が今千羅さんの腕の中にいることに気が付いた。耳元で聞こえる声がいつもよりくぐもって聞こえ、ドキドキする。
『あ、あの…千羅さん…？』
「もーちょっとこのまま…」
『は、はい…』
結局逆らうことも出来ず、千羅さんに抱き締められ続けた。数分後、もぞもぞと動き出し、私を腕の中から解放してくれた千羅さんは、私を膝の上に乗せたまま話を再開させた。
「どこまで話したんやっけ？」
『再来週から全国ツアーだとお聞きしました』
「ああ、そうやったね。…そんでな？これからほとんど毎週末、全国あちこちに飛ぶことになるんよ」
『はい』
「だから暫く会えません…っていうお話し…」
話し終えた千羅さんはとても落ち込んでいて、私は慌てて千羅さんの背中を擦って励ます。
『だ、大丈夫です！私もそろそろテスト期間になってしまいますし！』
「Aちゃんは俺と会えなくて寂しくないん？」
『寂しいですけど…また会える、って信じていられるなら、怖くはないです』
ほら、私たち最初がアレでしたから、と少し冗談めかして告げれば、千羅さんは泣きそうな顔をした後、もう一度強く私を抱き締めた。
「そうやな。寂しいけど、怖くない…うん、ありがとう、Aちゃん」
『何がですか？』
「俺、不安なったんよ。ツアーが始まったらAちゃんに会えなくなる。その間にAちゃんに飽きられたらどうしよう…って」
『そんな！』
「ツアーは長い。10月までかかる。せやからお互い寂しい思いをする事になると思うけど…俺の彼女のままでおって下さい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
