「次」 ページ14
千羅さんの色気にあてられて茫然自失している間に、気が付いたら私たちは店の外に出ていた。
『え？あれ？！』
「お会計はもう終わってるで」
『そんな！』
ご飯の後に交わされるこの会話はもうお決まりのくだりだ。スマートすぎる千羅さんのお会計には脱帽ものだが、私の気は済まない。いつか絶対に私が払うんだ、という対抗心みたいなものが芽生えていたりする。
「ここまでくると、もうおもろいなぁ」
『千羅さん！面白がらないで下さい！私は真剣なんです！』
千羅さんも私のこの野望に気が付いていて、毎回あの手この手でお会計を済ませてしまう。その為、私たちの間ではちょっとした攻防戦になっているのだ。
「まあまあ、また次頑張ってな？」
『…はい』
そして毎回、千羅さんの「次」という言葉が嬉しくなって引き下がってしまう。我ながらチョロいとは思うのだが、好きな人にまた会えると思うとどうしても頬が緩んでしまうのだ。
「次はいつ会える？」
『えっと…来週末はちょっと厳しそうなので、再来週以降なら空いてます』
「うーん…再来週以降か…」
ふと千羅さんの表情が厳しくなる。そして駅へと向かっていた足を止めた。自然と私も足を止める。
「Aちゃん、ちょっとだけ時間くれる？」
『はい』
幸いな事に早めの夕食だったため、門限までには時間はある。すぐさま頷いた私に、千羅さんはホッとした表情を見せた後、小さく唸った。
「大事な話やから何処か落ち着いた場所がええんやけど…良い場所が浮かばないんよなぁ」
千羅さんとしては周囲を気にせず、腰を落ち着けて話せる場所が良いらしい。私も思考を巡らせて、ある考えが浮かんだ。
『じゃあ、私の家に来ますか？』
幸いな事に私の家は、今向かっている駅の数駅隣だ。家に着いてしまえば、私は門限は気にしなくて済むし、千羅さんが望んでいる条件にも当てはまる。姉には事情を説明すれば入れてくれるだろう。
「…Aちゃんの、家？」
『はい。一応、姉に確認してからになりますけど』
「…お姉さん。せやな、お姉さんがおるもんな。うん、うん…」
ピシリと固まった後、千羅さんは何故か不自然な程に「お姉さん」という単語を繰り返しながら何度も頷いていた。そのぎこちない様子に不安がよぎる。
『あの、千羅さん…もしかして先程姉が何か失礼な事を言いましたか？』
「いいや！むしろお姉さんには大変お世話になったというか！」
『え？』
「あ、いや、何でもありません…」
いつになく慌てる千羅さんに、私は首を傾げる事しか出来ないのだった。
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妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
