「アイツ」 ページ47
折原さんの友人さんと入れ替わるように、折原さんは私の前にやって来た。
「Aちゃん、大丈夫やった？！」
『はい』
「アイツに変な事されてない？大丈夫？」
折原さんの「アイツ」という言い方は少しトゲがあるものの何処か気安さを感じられて、それこそが二人が知り合いである事を証明しているようだった。
『大丈夫ですよ。折原さんがそばにいない事を心配して下さっただけです』
「…そう。何か変な事とかも言われんかった？」
『いえ。あ、折原さんのご友人だと仰ってました』
「あー…うん、それはホンマ。何でか知らんのやけど、たまたま今日ここに遊びに来たらしいねん」
その後、折原さんに根掘り葉掘り会話の内容を確認されたが、何とか安心できたのか、胸に手を当ててホッと息をついていた。
「全く油断も隙も無いなぁ………」
いつもより首を伸ばし、キョロキョロを辺りを見回す折原さんは、ミーヤキャットを連想させた。
『ふふっ…』
「ん？何で笑っとんの？」
『いえ、大した事では…』
「えー気になるやんかー」
口を尖らせて、身体を左右に揺らす折原さんはいつもより少し幼く見える。その可愛らしさに自然と頬が緩んでしまうのは仕方ない事だろう。
「というかごめんな？急に置いて行ってしもうて…。そのさっきの奴と…もう2人、友人がここに遊びに来てるらしくてな？たまたま見かけて、釘差しに行かなアカンと思って飛び出してしもうて………」
『そういう事だったんですね』
折原さんはとても申し訳なさそうに謝ってくれたが、理由もはっきりしたし、先程の黒子の友人さんが言っていた「初デート」という言葉が嬉しすぎて、最低限の返答しかできない。
だが、返答があまりにもあっさりし過ぎていたせいか、逆に折原さんは慌て始めてしまった。
「ホンマにごめんな？次からはちゃんと事情を説明してから行くから…。あ、いや、そもそもデート中なのに離れたらアカンか…？」
『ふふ、折原さん。大丈夫ですよ』
「Aちゃん…？」
『私、今日のこのお出かけを折原さんがデートだって言ってくれただけで、不安がどっかに行っちゃいました』
ちょっと照れ臭いが、素直な気持ちを折原さんに伝えると、折原さんは驚いた表情をした後、嬉しそうに笑ってくれた。
「も〜〜〜Aちゃん、ええ子過ぎてアカンわ」
『えっ…』
「これ以上、俺を惚れさせてどないしたいん？」
両頬を優しく包まれ、今度は私が赤面する事になったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
