私服 ページ43
土曜日の朝10時。人で溢れ返る駅の改札前で私は折原さんと待ち合わせをしていた。
楽しみすぎて、待ち合わせの15分前には駅に着いてしまった私は、改札から見えやすい柱の前に立ち、折原さんを待っていた。
「Aちゃん、おはよう」
『折原さん！おはようござっ…います』
掛けられた声に顔を上げ、私は思わず折原さんの姿をまじまじと見つめてしまった。
「あはは、そんなに驚く？」
『折原さんの私服を初めて見たので…』
「どお？似合っとる？」
『すごくお似合いです………』
折原さんの今日の格好は、上は半袖の白のサマーニットに黒のカーディガン、胸元にはシルバーのネックレス。下は黒のスキニーパンツととてもシンプルだ。だからこそ、元の素材の良さが問われるのだが。
(どうしよう…格好良すぎて直視できない…！)
男性雑誌のモデルかと思える程に今日の折原さんは格好良い。現に近くにいる女の子たちはチラチラと折原さんに視線を向けているのを感じる。
そして隣にいる私を見て、ひそひそと何かを言う。明らかに「お似合いだ」と言われていない事が分かるような態度に、覚悟をしていたつもりでも気分は暗くなる。様々な感情が入り乱れて、私は顔を上げる事すら怖くて出来ない。
「Aちゃん、顔上げて？」
『は、はい…』
「んふふ、久しぶり」
『…はい、お久しぶりです』
それでも、折原さんの柔らかな声を聞けば自然と心は温かくなるし、顔を見れば自然と心が幸せに満たされる。
「今日も可愛えなぁ」
『そんな事…』
「ほんまに。今日も俺のために朝早くから可愛くしてきてくれてありがとう」
『…折原さんは、本当にずるいです』
どうしてこの人は、こんなにもあっさりと私の心を救ってくれるのだろう。
朝早く起きて、いつもより念入りにセットして髪の毛も、姉の道具も借りて頑張ったお化粧も、舞花に太鼓判をもらったこの服も、全ては目の前の大好きなこの人のためだ。
他の人に何と言われようと、私は折原さんの事だけを想って準備してきた。その努力と結果を、折原さんに誉めてもらえたなら、その甲斐があったというものだろう。
『折原さん、行きましょう！』
「っ！おん、行こか」
ならば、私がこれからすべき事は、他の人の視線に怯える事ではなく、目の前の折原さんにこの幸せを少しでも返す事だろう。
だから私は勇気を出して、折原さんの手を自分から握って歩き出す。そんな私に折原さんは一瞬驚いた後、すぐにふわりと笑ってくれたのだった。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
