個室 ページ34
舞花が去った後、私たちの間にはギクシャクした空気が流れていた。
「と、とりあえず行こか！」
『は、はい…！』
歩き出そうとして、私はある事に気が付く。
『あれ、折原さん今日はスーツケースないんですか？』
「ん？ああ…毎回煩いかなぁ思って、今日はコインロッカーに預けてもうた」
『…ありがとうございます』
「ええの、僕が煩いなぁ思ってただけやから」
折原さんの優しい気遣いに、私は曖昧に頷き返す。本当は私の声が小さくて、今まで何度も折原さんに聞き返させてしまった事が原因だろう。
「お、ここや」
『え、ここ…？』
折原さんが連れて来てくれたのは、何の変哲もないビルの前。ガラス張りの扉を開け、折原さんは慣れた様子で地下への階段を降りていく。
「ちょっと階段急やから、気ぃ付けてな？」
『は、はい…！』
折原さんは先導しつつ、何度かチラチラとこちらを確認しながら階段を降りて行った。
「予約していた折原です」
「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
地下にあったそのお店は個室ばかりのお店で、私たちは一番奥の個室に案内された。物珍しくてキョロキョロしていたら、もう少しで折原さんの背中に激突しそうになった。自分の危機察知能力を今日だけは誉めてあげたい。
「Aちゃん、ここどーぞ」
『ありがとうございます…』
「んふふ、個室が珍しい？」
『はい…何か………すごいですね…』
個室に入ってからもそわそわと室内を見回していたら、いつの間にか折原さんが隣に座っていた。
内心その距離の近さにドキドキしながらも、指摘する勇気も無く、折原さんに勧められるがままにお品書きを眺める。
『…うわぁ、沢山種類がある………』
「って言いながら容赦なくページ捲っとるのおもろいわ〜」
『あっ、折原さんは何飲みますか？』
「僕は生ビールって決めてたから、気にしないでええよ。Aちゃんはゆっくり決めて？」
『ありがとうございます…』
お酒も、ましてや苦いと噂のビールなんて飲めない自分はやっぱりお子ちゃまだな、と悲しくなる。
だが、直前に舞花に言われた言葉を思い出し、自分に喝を入れる。
(辛気くさい顔をするのは相手に失礼！落ち込むのは後回し！)
最後のソフトドリンクのページを眺めていると、スマホを弄っていたはずの折原さんが覗き込んできた。
「…なんか美味しそうなもんあった？」
『え、えっと…』
「あ、これとかどう？」
距離の近さに気を取られていた私は反射的に頷いてしまうのだった。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
