My Rules【一次創作】 (ページ9)

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「昨日の夜、姉ちゃん中学校に入学できること、すっごい楽しみにしていたんだよ。でも……」

　そう言ったところで、舟木さんの弟は顔を曇らせた。

「朝起きたら『学校に行きたくない』って言いだしてさ。姉ちゃん携帯も持ってないから、友達とケンカするわけないから、そういうわけでもないと思うし……」

　一区切りつけるように大きく息を吐いた舟木さんの弟。
　たしかに携帯を持っていなければ夜の間に友達ともめることはない。どうして今朝になって学校に行きたくないなんて言い出したんだろう。
　私がそう考えていると、美門さんは首をかしげながら舟木さんの弟に質問をした。

「でも学校には来てたよね？」
「うん、ママが無理やり行かせたからね」

　困った顔をして舟木さんの弟は言った。どうやら親がよく言う「行ってみなさい」で結局行ったみたいだ。
　そして、ホームルームが終わるなり一目散に家へ帰り、チェーンロックをかけて誰も入れないようにしているらしい。舟木さんの弟も、家に入れないようにする理由がわからないみたいだ。お母さんは今も玄関越しに舟木さんに話しかけているとのこと。

　舟木さんの人物像はよく知らないけど、美門さん曰くそんなことをする人間ではないとのこと。まあ、弟くんがおかしいと言っているあたり、普段の舟木さんはやはりそういったことはしないんだろう。まるで自分のことに悩んでいる美門さんを横目にしながら、私は舟木さんの弟にこう言った。

「あんまり酷かったらカウンセラーとかに相談すればいいんじゃない。私たちが首を突っ込んでもしかたないしね」

　私なりのアドバイスだった。できることなら協力したいけど、なんてったって"なぜそうなったか"がわからないから解決策が浮かばない。もしわかっているのなら、行動に移せる。
　まあ、関わりのない舟木さんを助ける義理がないというのが一番大きいけど。それに、家で調べたいこともあったので早めに退散させてもらいたかった。

「私は先に帰るね」

　そう二人に告げると、私はすたすたと歩き出した。