【hxh】月夜のグランギニョル【フェイタン】 (ページ8)

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無音。
　長かった。いや、長く感じただけで実際は数秒程度だったのかもしれない。それでも私には、静まっていた時間が長く感じられた。しかし、団長と呼ばれる人物が、その沈黙を破った。

「仮にお前と協力して、宝石を俺達に渡さなかったら。あるいは見つけられすらしなかったら。どうするつもりだ？」
「そんな可能性ない。けど、そうね。もしそうなったら、私の命も、家主の命もその娘の命も差し出す。そうすれば、この家の宝石全て手に入れれるわ」

　あえて全て、という表現を大げさにするため両手を広げた。命と彼らが欲しがっている宝石は対等ではない。だけど、この交渉は悪くないはずだ。そんなことを頭の隅で考えながら、「それに」と付け足す。

「私も、宝石を盗んだ犯人には会って話をしておきたいの」

　これで断られたら先にエトレアさんから宝石を返してもらって(もちろん相手の生死は問わない)どや顔晒しながら彼らに宝石を渡してやろうと思った。でも、そんな考えは無意味だったようだ。私が思っていたより彼はあっさりオッケーを出してくれた。

　その判断の早さに驚いたのは私だけでなく、彼の仲間もそうだった。明らかに反対だと言いたげな顔の人もいたが、彼らにもなにか掟(ルール)があるのか、団長の言う意見には皆従う様子を見せていた。

「ご協力ありがとう。まだブザーが鳴ってないということは盗んだ犯人はココにいる。ついでにいえば犯人は誰か目星はついているから、探すのに時間はかからない。ただ、それまでの準備が厄介だけどね」

　一応、まだ敵という認識があるので、警戒しながらドア付近に近づく。廊下へ出ると、彼らは見つけるのは任せるといった雰囲気で手を出そうとする気配はなかった。けど、任されっぱなしはあんまり好きじゃない。

　会議室の中に立つ。ここにいるわけではない。ただ、ここには犯人──そう、エトレアさんの匂いが染みついている椅子があるはず。私の狙いはそれだ。敵に念能力を見せることが癪だが、今回ばかりは仕方ない。両手の中指、薬指、小指を水かきあたりに入れて、人差し指は第二関節を曲げる。そして、親指同士をくっつけて、念を発動させた。

　──猫の手も借りたい(アシスト・キティ)。