しあわせなゆめのはなしを【歌い手/男主】 (ページ6)

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彼の話ページ6

「すごく好きだった歌い手がいたんです」

生放送で酔った彼はそう言った。

「本当に初期の頃の人で、僕がその人を知ったのは3曲目を投稿した時だったかな」

「その人は、全部で10曲しか投稿してないんです」

「10曲目は、その人を知ってる人はわかると思うんだけど、その人の、本当に最後の曲なんです」

「最初は嘘かと思ってたんです」

「ネットだし、誰も顔を知らない、本名も知らない。だから、信じてなかったんです」

「でも、10曲目が投稿されてしばらくしてから、動画の投稿文にURLが増えてたんですよ」

「やっぱり生きてるんだって、ページに行ってみたら、今までのその人が歌った曲への思いや夢が書いてあって」

「一番下に、地図と住所が書いてあったんです」

「書かれていた場所は、お寺で。そこにその人はいるって。もし、来てくれるのなら、住職さんに僕に会いに来ましたって伝えてくださいって」

「嘘だと思って、行ったんです。行って、住職さんにあいに来たって伝えたんです」

「そしたら、ビデオカメラを見せてくれました。そこに、優しそうな人が映ってて、声がその人と同じで、」

「あぁ、本当なんだなって思いました」