affection /os ページ12
ぐらぐらと、突然視界が揺れて、一気に瞼の隙間から光が差し込む。
『いっ、た……』
頭とか、腰とか、全部、全部痛い。
ここ、何処。私、何してたんだっけ。
「やっと起きた」
『…ん、…？』
綺麗な澄んだ目に、ふにゃと笑う口元。私の乱れた前髪をそっと撫でて整えるその指先。
『…、大野、さん？』
「そ、大野さん(笑)」
そこでやっと理解する。私は眠っていたということ、ここがソファーの上だということ、側にいるのは私の会社の上司大野さんであるということ。
『あ、あの、』
「んん？」
『ここ、何処ですか』
「俺ん家」
水取ってくんね、って立ち上がった彼のキッチンへ向かう後ろ姿を眺めて呆然とする。
白い壁、黒いカーテン、大きなテレビ
男の人の部屋とは思えない清潔感
『私…何してたっけ…』
「会社の飲み会で酔い潰れた」
『……』
そう、だ。仕事帰りにみんなで居酒屋に入ってずっと飲んでて。
『…途中からの記憶…無いです』
「あんだけ飲んでたらねえ、」
『はぁ…やっちゃった…』
ズキズキと痛む頭を抑えながら、テーブルの上に置かれた水を飲み干した。
『すみません…ありがとうございます…』
普段はこんなに飲むことないのになぁ、なんて自分の行動に後悔する。それでも彼は笑って、
「俺もちょっと飲み過ぎた、」
って、さり気ない優しさ。
『迷惑、掛けちゃってすみませんでした』
『お家にもお邪魔しちゃって…』
私は足元のバッグを掴んだ。とりあえず明日、会社にお詫びのお菓子でも持っていこう。
『お邪魔しまし…』
「帰んの？」
『…っ！？』
その瞬間。ドン、と鈍い音がして私はソファーに倒れ込んだ。
驚いて閉じた瞼をゆっくりと開けると、鼻と鼻が付くくらいの距離に、大野さんの顔。
『………、』
「帰んの？」
『…お邪魔、でしょうし』
「邪魔じゃねえって言ったら？」
『……明日も仕事ですし』
「おれも」
徐々に、近くなってくる距離
私の上に馬乗りになった大野さんに、私は身動きも取れない。
『おお、のさん』
「ん、」
『駄目です』
「ふうん」
『っ、』
「ウブな子って可愛いよね、(笑)」
そっと頬に触れた彼の手は、暖かくて、でも冷たくて。
『…大野さ、ん』
「ん、」
『…もう少し、お邪魔しててもいいですか』
んふふ、って小さく笑った彼と、甘く小さく降ってきたキスを感じながら、私はもう一度、瞼を閉じた。
夜が、近付く音がした。
end.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
