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貴方side
ゆっくりと周りを見渡す
私の手を両手でしっかりと握り、こちらを見つめる鬱
でも…手を触れられている感覚はない
なんでだろ…?
『鬱…心配かけてごめん』
身体を起き上がらせてそう言う。
彼からの反応は…ない
鬱は今…どこを見ているの?
どうして…目が合わないの…?
ut「…Aちゃん…もうまる5日寝てるんやで…そろそろ起きたってええやろ…」
『え…私は起きてるよ…?』
恐る恐る鬱の目線の先を見る
そこには寝ている私が…!
どういう…こと?
試しに彼の身体に手を触れてみる
スカッとすり抜けてしまう
あ…
すると、部屋にメルが入ってくる
メ「鬱…そろそろ何か食べて少し寝なよ…ずっとそのままでいちゃ倒れる…!」
ut「いや…このままでええ。いつ起きても大丈夫なようにずっと傍におってやりたいんよ」
メ「…分かった」
部屋を出ていってしまう
ut「なぁ…この国は平和になったんやで。それもこれも全てAちゃんのおかげやって国民が言ってる。犠牲はなし、被害もなし…でも…みんな王がおらんくて寂しがってる、はよ起きてや…」
そうか…何事もなく終わった…のか
良かった…
本当にその想いだけが大きかった
彼は死んでないし、国民も、誰一人として死んでいない
私は…王としての務めを成し遂げることが出来た
自分は生きているのか死んでいるのかよく分からない状態だけど、私一人の犠牲でみんなを守れたのならそれは本望
…ごめんね鬱
君は納得しないかもしれないけど、私はこの結果に満足してるよ
ヘ「鬱さん、Aなんだけど…蘇生魔法が出来ないから生きてはいるの…でも、なんでか起きない。何かしら原因があるはずだから…探して」
そうヘレンは言っていたのを聞いた
ut「原因…Aちゃんの中にあるこの変な光の魔力のことなんか…?そんな訳ないな…」
その後も数日間鬱は私のそばを片時も離れなかった
その間たくさんの話を私に聞かせてくれた
それまでに私の中で大きかった安堵感は消え去り、彼と話したい、触れたいという思いだけが募る
もう…戦争が集結してから2週間が経とうとしていた
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作者名:くいな | 作成日時:2019年11月28日 20時