秘密の難問5ページ目 ページ5
入学式から1ヶ月と少し
満開の桜は
鮮やかな緑色へ変わり
気づけばテストの1週間前である
このテスト前は部活もないらしく
放課後、結とふたりっきりの教室に残って
勉強するのが日課となった
ちなみに結はバレー部で
自己紹介のとき私も元バレー部と知って
体験入部に連れていかれそうになったが
丁重にお断りしたよ
あれは、間違ってなかったよね、うん
今日も現在進行形で
勉強中、なのだが
「ねぇ澤村、ここ分かる?」
「あー、そこはな…」
今日はクラスメートの菅原くんと澤村くんも一緒で
結いわく、
いつもAに教えてもらってて
邪魔になってるんじゃないか
らしい…
そんなこと、ないんだけど
むしろクラスメートとはいえ
あまり話したことのない男子とのほうが
緊張して集中できないっていうか
ふたりともバレー部で
結と話してるのもよく見るし
と、いうか澤村くんといるときの
結の態度はわかりやすい
本人に言ったら顔を真っ赤にしちゃうんだろうな
なんて
「水沢さん?
わからないところでもあった?」
手を止めてぼーっとしてたら
菅原くんの声に引き戻される
『ううん、なんでもないよ。
少し考え事してて』
考え事?
と不思議そうな顔をした菅原くんに
あのね、
と言いかけて止めた
シャーペンを持ち直す
“結の態度ってわかりやすいよね?”
聞こえてしまうかも
なんて思ってとっさに書いた
さっきまで解いてた数学のノートのすみっこを
ちらりと菅原くんにだけ見えるようにして
『この問題が解けないんだよね』
なんて言ってみせる
くすりと笑って
「それは難問だべ。
俺もわかんないや」
なんて言って
のってくれる彼は優しいのかも
ふたりでくすくす笑っていたら
結と澤村くんに不思議そうに見られていて
「水沢さんとのふたりの秘密だべ」
いたずらっ子のように笑う菅原くんの言葉が
なんか、くすぐったくて
さっきまでただのクラスメートだったのが
急に近く感じられたんだ
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作者名:音無つみき | 作成日時:2019年5月26日 23時