【snr】残業 ページ13
カチカチカチ、と、広い部署で一人、私の無機質なタイピング音が響き渡る。
『あー…』
疲れから、それ以上の言葉が出てこない。
今日は5月16日。
志麻ワンが当たっていたら今頃ライブ終わりでnoise聴いて余韻に浸ってるんだろうなぁ、と思うと、なんだか虚しくなる。
なんでここで残業してるんだろうなぁ。
…まぁ、“アイツ”が私に仕事を押し付けてきたからだけど。
ライブに行けてたらアイツの餌食にもならなかったはずなんだけどなぁ。
そう思えば思うほど、涙が込み上げてくる。
その時、隣にコトッとコーヒーが置かれた音がする。
『あ…』
「…こんな時間までお疲れ様。寝不足は肌荒れの原因になりますよ？」
『センラ…』
紳士の真似をしてやってきたのは上司兼彼氏のセンラだった。
「…A…？なんで泣いとるの？」
センラは私に目線を合わせるために膝をついて顔を覗き込んでくれる。
『…なんでもない！今頃志麻ワン行けてたら残業することにもならなかったのになぁって！』
そう言って、へへと笑う。
するとセンラは顔を歪めて「…アイツにまた押し付けられたんか」と言葉を漏らす。
『え、あ、うん、まぁ…』
私がコイツ、センラと付き合いはじめてから、アイツは事あるごとに私に仕事を押し付けるようになった。
なんだろう。嫉妬かな？
昔、私がアイツに嫌がらせをされはじめたことをセンラに伝えると、センラは申し訳なさそうな顔をした。
別に、私はセンラを好きでセンラは私を好きなんだから、よくない？
私はそう思い、全然気にしてないけどね、と言ったが、センラはますます申し訳なさそうに眉を垂らすだけだった。
どうせセンラのことだから、私が無理してそう言ってるって思ってたのかもしれないけど。
「…残りは俺がやったるから、Aはもう帰り？」
『いや、それはダメだよ。あくまでこれは私の仕事だから』
「…それじゃあ、俺にも手伝わせて？」
『え、い、いいよ。センラはもう帰りなって…』
「ええよ、俺やって明日月ラジで早く帰らなあかんから、今日くらい残業して会社に貢献せぇへんとな」
そうしてセンラは私の隣のデスクに座り、パソコンを立ち上げた。
『…ありがとうセンラ』
そう言葉をこぼすと、センラは驚いたように私を見つめた後、わしゃわしゃと私の頭を撫でた。
「恋人なんやし、もっと頼ってぇや」
『わっ、ちょっと、髪崩れるから！』
「どうせ誰もいないんやしええやろ」
オフィスが少し賑やかになった。
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蜜柑(プロフ) - 志愛さん» コメントありがとうございます！そうだったのですね…！応募できないのすごく辛いですよね、お気持ちお察しします…。そう言っていただけて嬉しいです！お気に入り登録もありがとうございました…！ (2022年2月16日 21時) (
レス) id: cbf841ccdd (このIDを非表示/違反報告)
志愛(プロフ) - 志麻ワン応募すら出来ない地方民だったのでこの作品に出会えてめちゃくちゃ嬉しいです、こんな素敵な作品作ってくださり本当にありがとうございます。お気に入り登録失礼します… (2021年5月7日 21時) (レス) id: 6d5c0c0ebe (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - りょくちゃさん» コメントありがとうございます！にやにやして読んでいただけて嬉しいですw完結までお付き合いくださりありがとうございました！ (2021年4月29日 19時) (レス) id: ea7ddd1b06 (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 完結おめでとうございます！すごくにやにやして読ませていただきました(*‘ω‘ *)ありがとうございました！ (2021年4月29日 19時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - しおさん» コメントありがとうございます！私もさかワン、夏ツ、当選することを願っていますw完結までお付き合いくださりありがとうございました！ (2021年4月29日 15時) (レス) id: ea7ddd1b06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑 | 作成日時：2021年4月17日 20時
