手向けられた毒−�� ページ39
食堂へ駆け込んだ男性は青木一雄と名乗った。どうやら遥斗さんの父親らしい。
「？苗字がちげーんだな」
「ああ、俺と遥斗は血が繋がってなくてね。遥子さん――遥斗の母親とは再婚したんだ」
きっとにおいの元は彼。震えが、止まらない。
「それより、遥斗が毒を盛られただなんて…ええと、確か毒キノコの毒、と言っていたかな。…ん？君、大丈夫かい？」
「ッ！？」
博士の後ろにいる私を見かねて話しかけようとし、――けれどその間に博士以外の人が割り込む。
「すみません、彼女は気が弱いもので…倉間さんが目の前で倒れたので、気が動転しているのでしょう」
「そうか…所で君は？」
「申し遅れました、私は沖矢昴と申します。倉間さん…息子さんとは友人でして」
「遥斗の友人か！いつも遥斗が世話になっているね」
「いえいえ。こちらこそ、よくお世話になっていますから」
割り込んだあの男は、胡散臭げに笑みを浮かべる。話し込んだ隙に江戸川くんに腕を引っ張られ、外に出た。
「っ、あの男から強い組織のにおいを感じたの…」
「青木一雄か…ん？そうだとしたら、遥斗さんが組織の存在を知っているのも…」
「待って。遥斗さんは多分、完全な組織側の人間じゃないと思う」
「…前々から思ってたんだが」
江戸川くんの眼鏡が怪しく光る。彼の視線が、まっすぐと私に突き刺さる。謎をどこまでも追求して解かんとする、探偵としての目つきだった。
「遥斗さんの事、知ってるのか？」
「…だとしたら、何？」
「教えてくれ。もし彼が組織の人間だったら…」
「彼はむしろ組織を潰したいと考えてる人間だと思う。…これだけは、信じて欲しい」
「灰原、お前…」
「…だって、そういう約束だから」
『僕の事は、みんなには内緒だぜ？』
バスジャック事件での初めての邂逅。彼は気付いてないとでも思っているのかしら。
(バカね。髪型を変えようと、髪色を染めようと、マスクがあろうと、声や態度…何より私を見る眼差しで気付くに決まってるじゃない)
彼に命を救われた。なら彼に義理を通したい。江戸川君ならきっと、辿り着いてしまうだろうけど。
「――とにかく、今は事件に集中して。青木一雄が組織の人間だとしても、今は警察も集まってる。どうこうするつもりは無いハズよ」
「…分かった。灰原、オメーは外で待ってろ」
「ええ」
どうか犯人を突き止めて、江戸川君。
――そして。
どうかあの人が無事でありますように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 302人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - トめAと@カド松さん» コメントありがとうございます。過去だけでもSAN値ゴリゴリ削られてますね… (2022年8月11日 9時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@カド松(プロフ) - SAN値ヤバそう･･･ (2022年8月11日 7時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 深夜さん» コメントありがとうございます。帰省の際に何かしらの悶着はありそうですね。 (2022年5月29日 19時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - コレお母さんとひと悶着あるパターンかな?(フラグ) (2022年5月29日 19時) (レス) id: 19b009e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 時凪さん» コメントありがとうございます。執筆の励みになります。これからも更新を頑張らせてまいります。 (2022年5月29日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作成日時：2022年5月29日 16時
