嘘つきな君へ (ページ30)

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３０（Kiside）ページ30

「太輔、今日何食べたい？」

ここに来てはや2ヵ月

夏も終盤に差し掛かっている

「そうだなぁ…。久々に宏光のハンバーグ食べたいな。」

「おっ！肉来たっ！」

最近暑くて、あっさりしたものばかりリクエスト来てたから、久々の肉のリクエストにテンションも上がる

「買い物行ってくる～♪」

クーラーの下でアイスクリームを食ってた太輔が

「あ、俺も行く！」

慌てて残りのアイスを口に入れた

「え？なんか欲しいものあるの？」

「アイス！」

「は？この間買ったばっかだろ。」

「もうほとんどないよ。新商品ないか、チェックする♪」

「ほんとお前アイス好きだよな…」

「宏光のアイス好きが移ったの！」

「それは俺のセリフだろ。」

もともと甘いものはあまり食べなかった俺

太輔があまりにも美味しそうに食べるから…俺もいつの間にか太輔と一緒に食べるようになった

「俺が楽しみに置いてたアイス、この間宏光が食べちゃったし…」

コイツまだ根に持ってる…

甘いものに関しては、コイツとことんめんどくさくなるんだから…

そんなに大事なら名前書いとけって！

そんなことも言えず、隣を歩く太輔をちらっと横目で見た

まだ暑い太陽

だけど、ふと吹き抜ける風に秋の気配を感じる

目を伏せて、すぅ…と吸い込んだ空気

その時太輔の「あ…」と言う小さい声が聞こえた

目を開いて太輔の目線を追えば、そこには点滅しそうな歩行者用信号機

俺達の周りにいた人達は皆、信号が変わる前に渡ってしまおうと掛け出していた

太輔が「走ろう」と言ったらどうしよう…

咄嗟に不安になる

けれど太輔は、信号機をじっと見つめた後、

「あ、宏光、あそこ、新しい店が出来てる。」

走り出す素振りも見せず、それどころか俺の気を逸らすように話しかけて来た

そこで初めて気が付いた

最近の太輔…俺の歩くスピードより少し遅めに歩いてる

前は俺の少し前を…まるで俺を導くように歩いていたのに…

今は俺を見守るようにほんの少し後ろを歩いてた

もしかして俺の病気に、太輔…気付いてる…？

横尾さんと3人で出掛けた居酒屋で

「横尾さん、太輔…俺の病気に気付いてるかも…」

太輔が席を外した隙に、横尾さんに言ってみる

…横尾さんは何も言わなかった

それが…横尾さんの答えなんだ…

そう思った

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