8話 ページ10
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結局ハリーをどうすることもできず、ダーズリー夫妻はハリーを1番後ろの席に乗せて動物園へと向かった。
このダーズリー一家と一緒とはいえ、人生初の動物園にハリーは少し浮き足立っていた。
生まれてこのかた、とはいえまだ10年ぽっちだが家から車で行くほどの遠出をするのは記憶の限り初めてだ。
車に乗り込む前に、バーノンおじさんがハリーを呼びつけた。
「言っておくがな、変なことをしてみろ。ちょっとでもだ。そうしたらクリスマスまでずっと物置に閉じ込めるからな!」
「僕、何もしないよ。本当だよ」
バーノンは信じていないようだったが、これ以上は何を言っても無駄だと思ったのかフンと鼻を鳴らしてドスドスと車に乗り込んだ。
ハリーも静かに車に乗り込みながら、ふとAのことを思い出していた。
公園の外灯も知らなかった彼女が動物園に来たら、一体どんな顔をするだろう。
想像してハリーは一度会ったきりの少女がこんなにも脳内を占領していることに気づいて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
「ムチャクチャな音を出して走りおって、チンピラ共が……」
横をオートバイに追い抜かれたおじさんが、不服だ、とはっきりと顔に出しながらそう言った。
オートバイに追い抜かれることが何故そんなに悔しいのだろう。前を走っていたって、後ろを走っていたって、邪魔されてる訳じゃないのに。
一人考えていると、ふと今朝見た夢が思い浮かんだ。
「僕、オートバイの夢を見た。空を飛んでたよ」
途端、おじさんは前の車にぶつかりそうになりながら運転席からグルリと後ろを向いた。
沸騰しそうなくらい真っ赤な顔。まずい、また失敗。
「オートバイは空を飛ばん!!」
「飛ばないことは分かってる。ただの夢だよ」
何も言わなければよかった。
ダーズリー親子はハリーが質問することを嫌ったけど、もっと嫌いなのは夢だろうが、漫画だろうが、まともではない話が大嫌いなのだ。
夢なんてまともじゃなければないほど楽しいのに。夢が嫌に現実臭かったら、そっちの方が嫌だろう。
内心そう思っておじさんに悪態をついたけど、そんなことを言ったって仕方がない。何度もさっきみたいに怒鳴られたくはない。
もう動物園につくまで何も言わないでいよう。ハリーは口を固く閉ざした。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
