【ハリーポッター】魔女が紡ぐ (ページ7)

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5話ページ7

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そんなに笑わなくてもいいじゃないか!と言い返すことは少年にはできない。できるはずもない。

突如現れた夢のように可愛い女の子に反論する方法を、少年はまだ習ってない。

そんな心境など知る由も無いAは、沈み始めた太陽を見てあっ!と声を上げた。

『私、もう行かなきゃ』

眉を下げた少女に、今度は少年が声を上げた。

ブランコから立ち上がってAがくるりと振り返ると、それに合わせてボリュームのあるフレアドレスがふわふわと揺れる。

真っ白いレースが、まるで天使の羽みたいに見えた。

『ありがとう。とっても楽しかったわ!もっと話したかったけれど、それはまたいつか』

そう言って片足を斜め後ろの内側に引き、フレアの裾をちょこんと摘んで可愛らしくお辞儀をした。

絵本のお姫様さながらの挨拶に、少年はどうしたらいいのか分からなかった。

だってこんな状況の挨拶の仕方なんて、それこそまだ習ってない。

もしや夕日が沈んだら、彼女にかかった魔法がとけてしまったり、それとも家の義理姉達にこっぴどく怒られたりするのだろうか。

まるでおとぎ話のシンデレラのようだ。

分からないながらに、見よう見まねでぎこちなくお辞儀をした少年に、少女はクスクスとおかしそうに笑う。

『私と貴方、今日から友達ね』

約束、と小指を絡ませた。

そして呆然とする少年の右手を半ば強引に取って握手すると、Aは帰って行ってしまった。

"今日から友達"

初めて人から言われた素敵な響きが、頭の中で何度も往復している。

やがて姿が見えなくなってしまっても、あのシンデレラのように消えていった少女は、急いだあまりにガラスの靴を落としてしまう、なんてことはない。

僕はあの子のガラスの靴を拾うことができないから、大きな声であの子を探すこともできない。

またいつか、なんて。そんな魔法のような言葉で巡り合えるなら、シンデレラもわざわざ靴なんか落とさないだろう。

少年は柔らかい手に包まれた自分の右手をしばらく凝視した後、Aが去っていった道をただぼーっと見つめ続けて、やっぱり目を逸らすことが出来なかった。

逸らしてしまえばこの幸せな幻想は終わってしまうから。

この手に残った微かに暖かい温もりまで、消えてしまうような気がしたからだ。

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