36話 ページ38
「ハリー、君って最高だよ」
悔しそうに戻っていったマルフォイの背中を見て、ロンが嬉しそうに言った。
「準備が出来ました。来なさい」
扉が開かれて、生徒が歩いていく。
建物の中のはずなのに、頭上には無数の蝋燭が漂い、淡く紺色の夜空が広がっていた。
「空じゃなくて、天井よ。魔法で夜空みたいに見えるだけ。"ホグワーツの歴史"という本に書いてあったわ」
『物知りなのね!ハーマイオニー』
いつの間にか復活したAが横ですごい!とはしゃぐと、そんなことないわ、とハーマイオニーが照れたように笑う。
「では、儀式を始める前にダンブルドア校長からお言葉があります」
さっき寮の説明をしてくれた威厳のある魔女の言葉で、校長が一歩前に出た。
アルバス・ダンブルドア校長。半月型の眼鏡で、真っ白くて長い髪と髭の優しそうな、何より偉大な魔法使いだ。
既視感の正体がカエルチョコのカードだと気づいて、ハリーは無意識にチラリとAを見た。
「まず初めに注意事項を言っておこうかの、一年生の諸君」
ダンブルドアはいくつかの注意事項を説明していた。ただAには、それよりも左側の机に座っている二人の赤毛の方が気になってしまう。
手を振っていたら、コウモリみたいな真っ黒い人に睨まれてしまった。一応、その先生にも手を振っておいた。
「A、知り合い？」
『全然』
コソッと聞いてくるロンに平然と答えると、ロンの肘に強めに小突かれた。
「名前を呼ばれた生徒は前に出てきなさい。この組み分け帽子が、寮を決めてくれます」
きた。Aの表情が強ばる。横を見るとロンも緊張しているようだ。
「ハーマイオニー・グレンジャー」
ぶつぶつと何か呟きながら前に行ったハーマイオニー。
『(ハーマイオニー、とんがり帽子が似合うわ)』
後で伝えよう、とAが心に決めると同時に、帽子が大きな声で言った。
「グリフィンドーーール!!!」
その後、次々に名前が呼ばれた。
「ドラコ・マルフォイ──スリザリン!!!」
帽子が彼の頭に乗る前だった。それ程素質があるということなんだろうか。
マルフォイは満足気に笑って、スリザリンのテーブルへと歩いていった。
「スーザン・ボーンズ──ハッフルパフ!!」
「いたっ……」
ハリーが額の傷を抑えた。
「ハリーどうかした？」
視線の先には、さっきの真っ黒い人。
『大丈夫？知り合い？』
「違う……大丈夫」
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
