29話 ページ31
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『もう大丈夫よ、ハリーありがとう』
そう言われて、自分ができる一番優しい力でAの背中をさすっていた手を止めた。
どうしてももう一度会いたいとあれからずっと思っていたAが、今まさに目の前にいる。
ということは、彼女も魔法使いなんだろう。いや、女の子だから魔女か。
そうか、魔女だったのか。あんまり可愛いからそりゃただの人間ではないと思ってたけど、魔女だったのか。
ハリーは向かい側でロンと楽しげに話すAを見た。
肌も、髪も、睫毛まで透き通るように白い彼女の瞳だけが、ガラス玉を嵌め込んだような碧眼だ。
大きな碧い目を縁取る白い睫毛は、ほんのり色づいた頬に影を落とすほど長い。
真っ直ぐ筋が通った鼻と、ぷっくりとした桜色の唇が小さな顔にバランスよく配置されている。
そういえば、あの日は左右で編んで垂らしてあった純白の髪は、今日は横の髪をとって後ろで一つにまとめられている。
それが、何だか知的そうな雰囲気でまたいい。
長くなってしまったが、一言で言えばそう。
まるで天使のように、可愛い。
『なあに？ハリー？私、そんなに見られたら穴が空いちゃう』
恥ずかしい〜とAがくねくねとちょっとふざけた動きをしながら笑った。
どうやら、じっと見すぎてしまったらしい。
「あ──ご、ごめん!」
慌てて目を逸らした。視線の先に床に落ちた青いカードを見つけて、拾い上げる。
さっきAの悲鳴に驚いて放り投げたチョコレートの箱に付いてたカードだ。
「これ……」
「ダンブルドアだ!僕、6枚も持ってるよ」
カードを覗き込んだロンが、白い髭を蓄えた老人を見て言った。この人はダンブルドアというらしい。
もう一度見ると、さっきまで写っていたカードの中のダンブルドアは消えて真っ暗になっている。
「あ……消えちゃったよ!」
「そりゃ一日中そこに居るわけないよ!当たり前だろ？」
『校長先生だもの。きっとものすごく忙しいのよ』
なんとも当たり前のように言われてしまった。
どうやら、この世界では写真が動くのは普通のことのようだ。チョコレートのカエルも動いたんだから、カードの中の人が動いたっておかしくない。
だけど、つい最近魔法界に来たハリーからすると、それだけのことでもいちいち驚いてしまう。
さっきまで人が写っていたはずの、真っ暗なカード。これじゃ、まるで写真が生きてるみたいだ。
マグルの写真は動かないよ、と二人に伝えると、「『それホント？!』」とだいふ驚かれた。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
