28話 ページ30
ハリーが車内販売のお菓子を全種類一個ずつ買った。
これにはAとロンも驚きだ。危うく、ハリーのあだ名が"大富豪"になる所だった。
「チョコにペパーミントだろ、えっとそれからほうれん草、レバー、臓物味──」
『百味ってほんとに何でもアリなのよ』
「そう。ジョージが鼻くそ味に違いないってのに当たったことがあるって」
うぇ、とハリーが苦い顔をした。
そう聞くとジョージは鼻くその味がわかるのかって話になってくるけど、実際百味ビーンズのあたりとハズレはほとんど半々だ。
「これ本物のカエルじゃないよね？」
ハリーの言葉に、さっきまでお菓子やらサンドウィッチやらをご機嫌で口に詰め込んでいたAが固まった。
「魔法だよ。カードのおまけが付いてるんだ。有名な魔女や魔法使いのカード。僕500枚も集めたよ」
『ハリー、そのチョコレートも買ったの……？』
ハリーが、どうして？とAを見た。
未だ固まったままのA。ハリーが紐を引いて、箱を開けると中からチョコレートのカエルが飛び出した。
『いやぁあああ!!』
Aが隣に座っているロンの腕にしがみついた。
隣のコンパートメントにも聞こえるほどの悲鳴。
その絶叫にビックリした二人が固まっている隙に、これ幸いとカエルは颯爽と窓から身投げしてしまった。
「どうしたのA？!大丈夫!？」
ハリーがカエルチョコレートが入っていた箱を放って、ロンにしがみつくAの背中を優しくさする。
何が起こってるのか分からないなりのハリーの最善の行動だ。
「袖が伸びちゃう……あ、そうだハリー、Aね、カエルが大の苦手なんだ。なんでも触っちゃいそうなのに、意外だろ？」
一方ロンは服の心配ときた。全く!!デリカシーというものがない!と言ってやりたい。
「そうだったんだ……ごめんね、A」
しょんぼりと肩を落とすハリー。まるで飼い主に叱られた犬のようだ。
無いはずの尻尾と耳が垂れ下がってるように見えて、Aが慌てて両手を振った。
『大丈夫!!それより、私の方がごめんなさい。チョコレートが逃げちゃった』
ごめんね、ともう一度言うと、ハリーはそんなことどうでもいいというように軽く笑った。
「僕、君に嫌われちゃったと思った」
『そんなこと、絶対ないわ!』
「そうだよ、カエルを見せたくらいで」
ハリーが買ったグミを食べながら、ロンが呑気に言った。
ロンはもう少し、なんか色々気にした方がいいと思う。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
