27話 ページ29
＊
「僕ロンっていうんだ。ロン・ウィーズリー。それでこの子が、A」
『Aです!二度目の自己紹介ね』
斜め前に座ったAが笑うと、彼女の瞳を縁取る長く白い睫毛が彼女の声に合わせて揺れた。
「僕、ハリー。ハリー・ポッター」
ロンとAが目を見開く。
『あなた、ハリー・ポッター？!』
「じゃあ、ほんとなんだね？!それじゃあ、君、ホントにあるの……？あれ──」
「何が？」
『もう、失礼だわ!ロン』
「あ、ごめん」
ロンがおでこに稲妻を書くような仕草をする。額の傷のことだろう。Aに叱られて「なんでもない」と言い直したロンにクスッと笑う。
「いいさ、ほら」
ハリーは何でもないように言って、前髪をかきあげて見せた。
「『うわぁ〜』」
「すっげー...」
『すっごいね...』
失礼だ!とロンを叱った割に興味津々に身を乗り出すAにハリーがまたクスクスと笑う。
Aが、ハリーが思っていたよりずっと表情豊かだったことがなんだか嬉しかった。
「Aとロンは、兄妹なの？」
その言葉にプッとロンが吹き出して、Aもキョトンとした後ロンの顔を見て同じように笑った。
「違うよ!ファミリーネームが違うだろ？」
僕はウィーズリー。こっちはシャフィック。とロンが自分とAを指差した。
「確かにAは危なっかしくて妹みたいだけど、僕達は……うーん、幼馴染みって感じ」
『私たち似てる？』
「ううん、見た目は似てないけど、あんまり仲が良さそうだったから」
目を見合わせて照れたように笑う二人に、ハリーもにっこり笑った。
しばらく話していると、車内販売魔女が目を引くようなお菓子のワゴンを引いてきた。
「お嬢ちゃん、坊ちゃん達、何かいかが？」
「僕はいいや、自分のがある」
ロンはいくつか包まれたサンドウィッチを出して言った。ワゴンに乗ったカラフルなお菓子を横目に、少し残念そうだ。
『私お菓子買う!そっちも一緒に食べていい？私モリーおば様のサンドウィッチ大好き!』
いいよ、とロンが嬉しそうに笑う。
『じゃあ、百味ビーンズと杖型甘草飴と、カボチャパイと──』
「え、食べ過ぎだろ」
『いいの!朝からお腹ペコペコ──』
Aの声を遮って、ハリーがポケットから何枚もの輝く金貨を取り出して。
「僕買うよ。ぜーんぶ頂戴!」
「『わあお……』」
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
