26話 ページ28
＊
『ロン!!こんにちは!』
「やあ!A」
ホグワーツに向かう新入生達で汽車が混雑する中、Aはやっと顔見知りを見つけて顔を綻ばせた。
『空いてるコンパートメントがもうどこにもないのよ』
私たち遅かったみたいねとAがロンに話しかけるが、ロンは気にせずはぐれそうになるAの手をしっかり掴んでどんどん汽車内を進んで行く。
既に新入生たちはグループになっているのか、それとも今まさに親睦を深めているのか、どこのコンパートメントも席はしっかり埋まっていて、二人で入る余地はない。
『ねえロン、いっそ立ってる？……あ、じゃあ着くまで暇つぶしに汽車の中を歩いてみない？』
「まだ全部見てないだろ？それに君、絶対に迷子になるよ」
まあ空いてなければフレッドとジョージの所にいけば……とブツブツ言いながら、ロンはAのいっそ立ってる？という提案を完全に無視してまた歩き出す。
汽車の廊下を進んで行くと、一番奥のコンパートメントに一人だけ座っているのが見えた。
『見て奥のところ、一人だけだわ』
「うん。あそこに入れてもらおう」
ズカズカと進んでいって、ロンがコンパートメントの扉を開けた。
座っていたのは男の子。眼鏡をかけて、本を読んでいる。
「ねぇここ、座ってもいい？他はもう空いてなくて。あ、二人なんだけど」
「あぁ、いい……」
よ、と続くはずだった言葉は出てこなかった。
本から視線を上げて扉の方を向きながら答えた男の子の綺麗な緑色の瞳が、眼鏡越しに大きく見開かれた。
コンパートメントの扉の前に立つロンの後ろに、純白の髪が揺れたのが見えたからだ。
「A!!？」
突然大きな声で呼ばれたAが、ロンの後ろからぴょこっと顔を出した。
そして声の主を見て、同じように目を見開くと、人差し指でハリーを指差して、あーー!!と声を上げた。
『きみ!!!ブランコの少年!!!』
「え、君たち知り合いだったの？」
間に立たされているロンは、自身の背中から顔を出すAに聞いた。
『そうなの!ここで会えるなんて!だってマグル界にいたから、てっきり……』
「……A、君って本当によく屋敷を抜け出すよね」
『もうそれはいいの!』
「あの──」
読んでいた本を栞も挟まずに閉じた。少し緊張したようなハリーの控えめな声が言った。
「ここ、一緒に座ろう」
睨み合っていたAとロンの表情がコロリと変わる。
「『ありがとう!』」
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
