1話 ページ3
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家にいても息が詰まるので、丸眼鏡の少年の足は自然と家の近くの公園へと向かっていた。
目的も無く、引き寄せられるようにブランコに乗った。ぐるりと辺りを見回すが、誰もいない。
時刻は短い針が五を過ぎた頃。良い子は公園から帰った後だ。
ギーギーと一人分のブランコが弱々しく響くのがなぜか無性に情けなくて、少年は力任せに地面を蹴りあげた。
少年には両親がいない。
少年が生まれてすぐ後、交通事故で亡くなってしまったらしい。だから物心ついたときには既に、親戚である叔父叔母の家に預けられていた。
しかし、少年と一緒に住む家のいとこのダドリーはすごく意地悪なヤツだ。
少年をこき使っていじめて、それでいて両親に甘やかされているせいでいつもふんぞり返っている。
おまけにカツラを被った豚のような見た目のとんでもないヤツなのだ。
少年はダドリーの大きなおしりによって潰されてしまったセロハンテープだらけの可哀想なメガネを、鼻筋の上で押し上げた。
無論、ダドリーの親で少年の叔父叔母であるバーノンおじさんとペチュニアおばさんも、負けず劣らず酷い人だ。
ギコギコと不快な音を立てて大きく揺れるブランコが今度はやたら腹立たしくなって、結局少年は地面に足をつけた。
もはやなんの音もしない静かな公園で少年がたった一人、ブランコに座って俯いている。
少年は密かに思う。
あんなヤツ、僕が黙っているからっていい気になって……。
今日こそ言ってやるぞ、と意気込んだりしてみても、そんなことをしてしまえば、あの埃かぶった物置部屋からしばらく出ることも許されない。それどころか、まともな食事を与えられないことすら有り得る。
少年には、気が滅入るような生活を送る少年を慰めてくれる友達は一人もいないし、元気づけてくれるものなど何一つ無い。
改めて思い知った理不尽な現実に、少年の気持ちはどんどんしぼんで、ついに寂しくため息をついた。
静かになった公園に乾いたブランコの音が響いた。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
