11話 ページ13
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バンッ!!と大きな音を立ててバーノンが家の扉を閉めた。
「何をやらかした!!」
怒声と共に髪の毛を鷲掴みされて、ハリーは呻き声を上げた。今絶対に髪が何本か抜けたと思う。
髪を引き攣られる痛みに堪えながら、必死に弁解しようと訴える。
「僕じゃない!本当だよ!!あっという間にガラスが消えたんだ、魔法みたいに!!」
しかし聞く耳持たず。バーノンはハリーを乱暴に部屋に投げると鍵をして大きな声で言った。
「魔法なんてものがな!!あってたまるか!!!」
顔を真っ赤にして、目は血走って、ハリーの顔に唾が飛ぶほどバーノンは語気を強めた。
ああ、なんてことだ。いつにも増してカンカンである。
きっとしばらくはこのまま埃まみれの物置部屋から出ることは許されないだろう。
ハリーもこれには渾身のため息をつく他に、自分を慰める方法が見つからなかった。その盛大についた渾身のため息も、誰に届くこともなく、虚しくただ薄暗い部屋の空気を少し揺らすだけだった。
ハリーが暗い物置に入ってからだいぶ時間が経った。
この物置には当然時計がないから、どのくらい時間が経ったのか、ダーズリー達が眠ったのかどうかも分からない。
ハリーは横になって目を閉じた。
両親が自動車事故で死んでからダーズリー家で過ごして10年、思い出す限り惨めな10年が過ぎた。
両親が死んだ時、自分が同じ車に居たのかさえも思い出せない。
もし一緒の車に乗っていたなら、どうして僕だけ生き残ってしまったんだろう。
今のこの状況から考えて、僕の人生はそこで両親と一緒に幕を閉ざした方がずっと幸せだったに違いない。
ダーズリー一家はハリーの両親についての話を絶対にしないし、勿論質問も禁止されている。
この家のどこにも、ハリーの両親の写真は無い。
何も無いのだ。家族も、友達も。何か一つでも大切なものでさえ、ハリーには何も無い。
──いや、ある。ひとりだけ。
何も無かったハリーにたった一人、友達だと言ってくれた人。信じられない程優しく、手を握ってくれた人。
眉ひとつ歪めず、眩しい笑顔を向けてくれた人。
ああ、あの子の笑顔は本当に眩しかった。輝いていた。
そうだ。まるで真っ白い羽に包まれた純白の天使のようだった。
「(……今、どこにいるんだろう)」
もう一度会いたい。あれから何度も何度も頭の中で思った名前。
忘れるはずもない。彼女の名前は、A・シャフィック。
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
