【ハリーポッター】魔女が紡ぐ (ページ11)

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9話ページ11

その日は天気も良く土曜日ということもあって、園内は家族連れでごった返していた。

入口のアイスクリームの売店で、おばさんはダドリーに大きなチョコレートアイスを買った。

もちろんハリーに買うつもりなんか無いおばさんは素早くハリーを遠ざけようとしたけど、愛想の良い売り子のおばさんが「坊やは何がいい？」と聞いたので渋々ハリーにも1番安いレモンアイスを買った。

「(これだって、結構いける)」

家から出かけて、アイスまで食べられるなんて今日は素晴らしい日だ。

しばらく歩いて、ハリーはその中の爬虫類館の壁に沿って並ぶガラスケースのヘビの前で足を止めた。

館内は薄暗くて、爬虫類からしたら適温なのだろうが、人間には少し寒い。

ガラスケースの中の蛇は眠っていて動かなかったけど、ハリーはその蛇をじっと見ていた。この館内で1番大きな蛇だ。

するとダドリーが寄ってきた。

彼自身以外の人はもうみんな分かっていると思うけど、ダドリーは生粋のトラブルメーカーだ。

「ねえパパ!動かしてよ!」

この時もしっかりとその役割を全うした。

ダドリーは巨大な毒蛇や、人間を絞め殺しそうなニシキヘビを見たかったようだったけど、このガラスケースの中の大蛇は今そういうムードではないらしい。

ダドリーの命令でバーノンおじさんがガラスケースをドンドンと叩くが、蛇は動かない。

「動け」

「動けよ!!」

「寝てるんだよ」

「ちぇ、つまんないや」

そう言ってダドリーは別のガラスケースの方へ行ってしまった。

文句を言いながら去っていくダドリーを少し目で追って、また蛇に視線を戻す。

蛇の方こそ、退屈のあまり死んでしまってもおかしくない。

一生このガラスケースの中から出られないのに、一日中ガラスを叩いてちょっかいを出すバカな人間の他に友達もいない。物置で寝起きする方がまだマシだ。

気持ちよく寝ていたのに、急にドンドンと壁を叩かれたら蛇だっていい気はしないだろう。

「ごめんね、君だってうんざりだよね。こんな所に閉じ込められて、毎日見たくも無い顔に覗き込まれて」

ハリーの同情に、蛇はしばらくハリーを見つめた後、バチンと効果音がつくようなウインクを見せた。

気にしてないさ、とそう言っているようにも見える。

まさか返事が返ってくるとは思わないハリーは目を見開いて、息を呑む。

「君、きこえてるの？」

そしてさらにあろうことか、蛇はハリーの問いかけに頷いた。