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髪を切る直前


準備に取り掛かっているお鶴さんに恐る恐る話しかけた。


「……お鶴さん、お願いがあるんですけど……」



「どうしたんだい?」




口をキュッと結んでしまうが、真っ直ぐお鶴さんの方を見ながら言った




「髪を男性のように短く切って、黒に染めて欲しいんです」




「……それは、またどうして……」


心配そうに私の手を取った。


「この乱世で生き残るには、男のフリをするしかないと思ったんです。」



「でも……」とお鶴さんは言うが、続けて言った。



「も、もちろん、女性も強い方はいますよ!カッコイイ方もいます!それでも、自分の身を守る為に男のフリをしたいんです。」



戦なんて当たり前の時代。もし女のままでいたら、いつ襲われてもおかしくないし、なんせ、男性が都合のいい時代でもある。




「お願いします。」とお鶴さんにお辞儀をした。




無言が続く中、お鶴さんはギュッと私を抱きしめた。




「……そう言うことなら、分かったわ。さ、顔を上げてちょうだい。」





「ありがとうございます。」




素直に顔を上げ、お鶴さんを見つめる。




「ミサが決めたことなら私は何も言わないわ。けど、少し名残惜しいわね、」



寂しそうに優しく私の髪の毛を触った。




「大丈夫ですよ、お鶴さん。まだ、女捨てた訳じゃないので!」




明るく笑い、そして私の髪の毛をきってくれた。












「……どうかしら?」



手鏡で髪を見ている私にお鶴さんは話しかけた。



「いい感じです!多分、幸治さんが見たら驚いちゃいますけど、」



(あの心配性な幸治さんだから、叫んじゃうかも、?)



「何言ってるの、卒倒するに決まってるでしょ?」



当然のような態度のお鶴さんに思わず吹き出してしまった。



「ぶっ……あははっ!」




そして、幸治さんが帰ってくると、

お鶴さんの言う通り、卒倒した。

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作者名:あいす | 作成日時:2023年11月20日 22時

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