爆裂ワガママお嬢様がとある彼を思い出したら (ページ8)

今日:25 hit、昨日:118 hit、合計:761,317 hit

104 ページ8

私(メルロー)の発言に、バーボンは見たことのない表情を浮かべて固まった。

そのまま全く動き出す様子がない。

言いたいことを言い終えた私(メルロー)は早々にバーボンから視線を外し、改めてPCへと向き直った。

再びカタカタとタイプ音が響き始めて数分。

未だ何ひとつ言葉を返さないバーボン。

私(メルロー)は何だか居心地が悪くなってきた。

(いつもは煩いくらいに喋るのに。)

先ほどの言葉が気に障っただろうか。

勝手な意見を押し付けられて怒った？それとも呆れた？

この沈黙は一体何なんだ、頼むから何か返してくれ。

私(メルロー)自身も常になく集中が途切れ、ついにキーボードを叩く手が止まる。

何故私(メルロー)はこんなにバーボンを気にしているんだ、いつもは逆だろ。

色々と気になって仕事が手につかなくなったので、負けた気分になりつつもチラリとバーボンを見た。

バーボンは、片手で顔を押さえて俯いていた。

『……バーボン？』

それはなんの感情の表れだ…？

ショック？怒り？それとも失望…？

訳が分からなくなって思わず呼びかけると、バーボンはやっと顔を上げた。

その表情は、

いつになく優しげだった。

(え？)

『……そうですか。あなたには、そう見えますか。』

バーボンは力が抜けたようにソファの背もたれへ体を預けると、少しだけ困ったように眉を下げて、へにゃりと笑った。

随分と気の抜けた笑みだ、と思った。

『ですが生憎と、組織の離脱は考えていません。』

『……仕事人間だね。』

『そういう訳じゃありませんけど……まあ、ここには放っておけない人もいることですし。』

じっと見つめられながら聞いた言葉。

それをまるで私(メルロー)に向けて紡がれた言葉のように感じてしまい、無意識に目をそらす。

しかし、バーボンがそれを見逃すことはなかった。

『こら、あなたのことですよ。』

幼子に言い聞かせるような声音で、重ねて告げた。

『メルロー…あなたこそ、こんな場所に留まる理由などあるんですか？』

『理由…？』

理由、だなんて。

……あれ？

(私は一体、ここで何を––––––––)

『あなたにはもっと…陽の当たるところが似合うと思うんですけどね。』

……そう、か。

–––––––––そうか。

私(メルロー)が組織を抜けたのは、この翌日のことだった。