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「ね、ねえ!それよりもあと少しだよ!」




私と安室さんが話している間ずっと黙っていたコナンくんが、この空気に耐えられなくなった様子で声を上げた。


あと少しと言われ一体何のことかと思っていたが、すぐにハッとして思い出す。




私はごそごそと懐を探り、パッケージに入ったディスクを取り出した。


私たちが死力を尽くして守り通した組織の情報が詰まった一枚である。




時計を確認すれば、時刻は既に午後十一時五十九分。


Xデーまで残り一分を切っていた。




「でもPCがないな…」

「俺のPCがそこにある。」

「Aさん、これ!」




安室さんに促され、コナンくんから受け取ったPCを立ち上げ、ディスクを入れる。




残り数十秒。いよいよだ。




「Aさん。」

「ん?」

「記憶媒体を守り通してくれて、ありがとう。」




記憶媒体…ディスクのことだな。




私の目を真っ直ぐ見つめてお礼の言葉を口にするコナンくん。


やっぱりこうして見ると、小学一年生には見えないな。


纏う空気が全然違う。




「コナンくんも組織と因縁があったりするの?」




意地悪かなと思いつつも私はそう尋ねた。


コナンくんは一瞬だけ言葉に詰まったものの、すぐにニッと笑って見せた。




「全部が終わったら、話すよ。」




……ほう、言質はとったぞ。




「へえ、是非僕にも教えてほしいな。」




安室さんもクスリと笑って、ルームミラー越しにコナンくんを見た。


一人称が「僕」になっている。


ご褒美タイムはおしまいか…




「ええ?」

「その卓越した推理力も、尋常ならざる精神力も、小学一年生が持ち得るものじゃない。そのおかげで、彼女を失わずに済んだことだし…そりゃあ気になるさ。」

「モテモテだねえコナンくん。」

「…Aさん、人のこと言えないからね。」




コナンくん、呆れ顔である。


よせやい、照れるじゃないか。


確かにさっきまで組織の方々から熱烈な追っかけを食らったが。




「もー、二人とも、十秒切ったよ!」

「お。じゃあカウントダウンでもしようか。」




何だか緊張してきた。




ディスクには一体どれほどの情報が詰まっているのか。


少しだけ震えそうになる声で、カウントダウンを開始する。




五。




四。




三。




二。




一。





––––––––(ゼロ)





ついにディスクが本来の機能を果たし、情報を画面一杯に提示する。




それは確かに、最後の抗いの一手だった。

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作者名:しま | 作成日時:2018年5月8日 23時

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