57 ページ10
(コナン視点)
俺は取り乱す安室さんを落ち着かせてから先ほどあったことを詳細に語った。
ラウンジでメルローらしき女性を見かけたが、確信が持てなかったのでその場で別れてしまったこと。
去り際に仕掛けた盗聴器で情報を探っていること。
すると安室さんは何とも形容しがたい表情を浮かべて「…今も盗聴してるのかい?」と尋ねた。
俺は頷いて眼鏡に触れる。
「この眼鏡が受信機になってるんだ。さっきからずっと聞いてるんだけど…」
まだ何も聞こえない、と言おうとした次の瞬間、盗聴器がついに音を拾った。
ピリリリ、と持続的に鳴っていることからして目覚ましか通話着信だろう。
俺の様子の変化に気づいた安室さんは、俺の眼鏡に耳を寄せて黙り込んだ。
音はしばらく鳴り続けた後、ピッという音とともに途切れる。
『…………はい。』
妙に暗い声だ。
どうやら先ほどの音は通話着信のもので間違いないようだが、あんな暗い声を出すほど嫌な相手なのだろうか?
俺が思考を巡らせていると、安室さんがぼそりと「寝起きの声だ…」と呟いた。
…………うん、なんで知ってるの?
『…あれ、電話はかけてこないんじゃ…』
『…………ああ、今豪華客船に乗ってる。』
『はっ?』
『あ、ああそう…』
『いやストーカーみたいって思った。』
『ごめんて、……ん?…………いや、こっちの方が話しやすいから。前の方が良かった?』
相変わらず少々棘のある言い方だが、さっき俺と話していたときの口調よりは軟化している気がする。
それだけ通話相手に気を許しているのか。
はたまた俺が怪しまれていたのか…
とにかく、あの盗聴器では通話相手の声までは聞き取れない。
なんの話をしているのかは後である程度推測しなければ。
『……じゃあそういうことだから……え?』
『なんで?そっちで居場所把握してるんでしょ。』
『…………まあそうだね。じゃあ今後はそうする。つっても残り一週間だけど……』
残り一週間。
メルローが盗み出した情報の解禁日と重なる。
やはり彼女がメルローなのだろうか。
『じゃあまた後で…………父さん。』
ぷつり、と電話が切れた。
2101人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時