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(灰原視点)





昼までの時間をどのように過ごしたのか、あまり覚えていない。


それほどまでにあの出会いは衝撃的だった。




「どうした灰原?」




私はその声でハッと我に返った。




と同時に、無音だった世界に音が戻ってくる。




昼時のレストランには乗客のほとんどが集まっていた。


人数が集まればそれなりの喧騒を生む。


この喧騒が今まで耳に入ってこなかったのが不思議なくらいだ。




隣を見れば不思議そうな顔をした工藤くんが私を見つめていた。




「あ…」

「さっきから全然食べてねえじゃねーか。」




具合でも悪いのか、と尋ねる工藤くんに首を振る。


そしてちらりと周囲を確認した。




毛利探偵と高校生の二人、昴さんと安室さんの五人は隣のテーブルで料理を楽しみながら談笑している。


私が座るテーブルには工藤くんと博士、吉田さん、円谷くん、小嶋くんの六人。


吉田さんたちは、先ほど博士から繰り出されたらしいダジャレクイズに文句を言っているところだった。




工藤くんは怪訝な顔をしている。


例え私がはぐらかしても、何かと邪推するだろう。




私は意を決して、先ほどあった出来事を彼に話すことにした。









「何!?」




「うわ!」

「ど、どうしたんですかコナンくん?」

「え?わ、悪い……何でもない。」

「何だよ、びっくりさせんなよな!」




工藤くんは怖い顔をして声を張り上げた。




その声は喧騒に紛れたけれど、さすがにこのテーブルの近辺には十分すぎるほど届いたようだ。


工藤くんの突然の大声に驚いた吉田さんたちが、会話をやめて彼を見た。


隣のテーブルからも「どうしたのコナンくん?」と声がかかる。




「な、何でもないよ蘭姉ちゃん!」

「そう?あまり騒いじゃダメよ?」

「は、はーい…」




みんなの視線から解放された工藤くんは、再び顔を強張らせて私に顔を近づける。




「間違い無いのか?」

「ええ…私も、まさかとは思ったんだけど。」




「メルローがこの船に乗っている。しかも変装なしの素顔のままで…」




私がそこまで言うと、工藤くんは弾かれたようにレストランから飛び出した。

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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時

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