生徒と私 ページ4
「修行は大変?」
「大変だけど五条先生が見てくれるからね!」
最強呪術師に見てもらえるんだ、とにかっと笑う。
五条先生、か。
あの人がこんな可愛い子の教育者になったんだ。
人って変わるもんだなぁ。
しみじみ思った。
「悠仁くんって、前から呪いが見えてた訳じゃないんでしょ?突然こっちの世界来たんだよね?」
「うん、分からないことばっかりだよ」
「ご家族とかは心配してないの?」
「あぁ·····俺はじいちゃんが親代わりみたいなもんだったんだけどさ。じいちゃん、もう死んじゃったから。」
彼は、少し視線を下に逸らした。
「そっか·····大変だったね」
「じいちゃんが死んだその日に、宿儺の指食べてさ、こっちの世界に首突っ込んだんだ。そっから高専に入学するまであっという間だったから。」
言うと、悠仁くんはにかっと笑った。
「慌ただしかったけど、高専に来て寮入ったら、誰かが周りにいるから楽しかったよ」
へへへと鼻を擦る。
その純粋な笑顔にきゅんとしてしまった。
「悠仁·····お姉さんがアイス買ってあげる!」
「え、まじで!?やったぁ!」
その後も私が尋ねれば、彼は色んな事に答えてくれた。美味しそうにごはんを食べながら。
悔しいから続けると、食後も縫いぐるみと映画を見始めた悠仁。
本当にアイスを買ってあげようと、外に出てコンビニに向かおうとしていると、やぁ、と声をかけられた。
五条さんだった。
「さっそくありがとう、A」
「いえいえ、まだ大した事してないですよ」
思わず苦笑した。
昼が長くなってきたとは言え、もう辺りは真っ暗だ。
宵闇に、ぼんやりと五条さんの白い髪が浮かぶ。
「私、五条さんがサポートしてほしいって言ってた理由は何となく分かった気がします。」
腕を軽く組み、こちらを見る五条さん。
「頑張り屋の良い子ですね。ひねくれずに、真っ直ぐで。大好きなおじいちゃんが亡くなっても。」
祖父を亡くし高専に入るに至った悠仁の状況は悲観的に捉える人は多いはずだ。
その中にあっても彼はとにかくひたむきで、自分の命をかけて人の命を救う事を微塵も疑っていない。
「でも、まだ高校生なんですよね」
ぽつり呟いた。
私の言葉は、瞬く間に闇に溶けていく。
「·····そうだね」
にっこり笑う五条さん。
「何をしてあげれるかは、模索中ですけど」
慌てて、付け足した。
見上げた漆黒の空には、夏の大三角が輝いていた。
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しゃっと(プロフ) - 猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )さん» いつもコメントありがとうございます(T_T)私が書くと、まわりくどくてあんま甘くない話になるんですが(--;)猫人形さんのコメントに私も癒されまくりました!!今の作品ものんびり更新でしたが・・・頑張る気がわいてきました!! (2021年4月18日 21時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - 完結!お疲れ様です〜柔らかい優しさと切なさを兼ね備えていてとても良かったです…忙しくて開けていなかったのですが最後まで読めて心満たされました、、ありがとうございます( ; ; ) (2021年4月18日 9時) (レス) id: d8d7cfe01e (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - しゃっとさん» 前作の近くて遠い。も読ませて頂きました!そちらもまた良かったです..はい!更新楽しみに待っています^ - ^ (2021年2月15日 23時) (レス) id: d4943c1156 (このIDを非表示/違反報告)
しゃっと(プロフ) - 猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )さん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます!季節外れなお話ですが頑張って書きますのでまた見にきてください^^ (2021年2月13日 23時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです!言葉選びとか凄く好みです…! (2021年2月12日 0時) (レス) id: d4943c1156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっと | 作成日時:2021年1月6日 18時