1年前のあの日13 ページ33
何とか勝利した僕の理性を褒めてあげたい。
布団をかけながら、寝ている彼女に声をかける。
「怖い顔した僕の方が好きだって言ってたのも、今なら何となく分かるよ」
興味無さそうに上から言われるより、Aの言葉で怒り感情を露わにされた方が、同じ振られるのでも嬉しかった、という事なのだろう。
Aとは同級生として長く一緒にやってきたが、今日のように子どもみたいに泣くのを見たのは、初めてだった。
知らない男を庇い、そいつの為に泣くA。
その男にしたように、僕に対してもAが感情的になる事はあるんだろうか。
あの日笑って公園を去っていった後、彼女は泣いたのだろうか。今日みたいに。
Aに彼氏ができたこの一年、僕なりに丁寧に、彼女と向き合ってきたつもりだった。
向き合う度に、Aとの間にはどこか隔たりがあると痛感する。
互いに安心できる筈なのに、どこかで一線を引かれていて、彼女は決してそこを踏み越えようとしない。
勿論、男がいたというのはあるんだろうが。
別の男を作ったのだって、僕に見切りをつけた合図だったのかもしれない。
今まで、AはAなりに、僕との関係を変えようと努力していたのに、見て見ぬふりをずっとしてきたのは僕だ。
一年は長く焦れったかったが、もうその男もいない。
ならば。
僕がその線を飛び越えたらどうなるだろう。
あの高専時代の自分がやっていたように、Aに振られる姿を想像すると、背筋が冷えた。
あの頃、女は僕をすぐ自分のモノ扱いしたがるとAに言っていた自分が、笑える。
今の自分が、まさにその女みたいになっている。
「ほんと、愛って呪いに近いよね·····」
もうあの1年前のように、自分が選ばれなかったという胸糞悪い嫉妬や劣等感は感じたくない。
取り敢えずは、Aがもう他の所にフラつかないように、首輪をかけないと。
こんな事思うから、硝子や七海に引かれるんだろう、と失笑する。
ボタンを外し、露になった綺麗な首筋をそっと撫でた。
「おやすみ、A。··········」
去年、髪飾りをプレゼントした時みたいに、彼女にお祝いの言葉を囁いた。
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しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます!自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…!嬉しすぎます。ありがとうございます!また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です!!完結おめでとうございます!新作が出たら1番に応援しに行きますね!素敵な作品を有難う御座います!! (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっと | 作成日時:2020年12月5日 14時