1年前のあの日3 ページ23
いや、そんな理由つけて、本当はただ自分に自信が持てなかったのかもしれない。
才能のない、自分の平凡さに。
昨日、珍しく突然彼氏に呼び出された。
カフェに入って、のらりくらり喋り本題を出さない彼のいつもと違う様子に少しイラついてたら。
言われた。
「A、他に好きなヤツいるだろ?」
「·····え?」
「それでもいいと思ってたけどさ。もう別れようよ」
頭が真っ白になる。
自分でも驚くぐらい、動揺してる。
「いないよ、好きな人なんて。」
彼が苦笑し、少しため息をついてから続けた。
「見てたら分かるよ」
珈琲をゆっくり飲みながら、笑う。
「サトルってやつ、じゃない?」
思わず息を呑んでしまった。
「何で悟のこと知ってるの?話したことあった?」
元々、悟が好きなのを埋め合わせるようにこの人と付き合ったのが始まりだった。
その申し訳なさもあって、彼の前では悟の名前も写真も絶対出さなかったのに。
「よくメール来てただろ。それに一回だけ見たことあるよ。家の前でそいつと話してるとこ。白髪で目隠しでさ。あいつがサトルだろ?」
間違いない、そいつは悟だ。
「最初、変質者かと思ったんだけど」
その感覚も、間違いない。
確かに、あいつはパッと見、いや大分見ても変だ。
「仲良いの、遠くから見てても分かったよ。Aは気付いてなかったけど、サトルってやつは俺が見てるの知ってて、わざとお前と仲良くしてたと思う」
やりそうだ。あいつなら。何故ならば。
「悟、性格悪いから。深い意味なんかないよ」
「いや、あれはめちゃくちゃ俺に威嚇してた。すげぇオーラだったよ。元ヤン?現役のやつ?そこは心配なんだけど」
「あぁ·····大丈夫、そっち系ではない。」
でも、それ以上に色んな意味でヤバい奴だから、完全否定はできない。
「そっか、ならいいんだ」
一息ついて、彼は飲んでいた珈琲を一気に飲み干した。
「A、今まで楽しかったよ。気にせず、あいつのとこ行け。明日もサトルにお祝いしてもらえよ」
優しく、でもどこか投げやりに言う。
立ち上がろうとする彼を、慌てて引き留める。
「ま、待って。悟は確かに仲良いけど、ただの仕事の同僚で·····」
ピロンと私のスマホが鳴る。
点灯したスクリーンについ気を取られて表示を見ると、映し出された【五条悟】の文字。
彼が私とスマホを交互に見て、笑った。
「じゃあな」
去っていく彼を、追いかけられなかった。
バレてたのか。私の気持ち。
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しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます!自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…!嬉しすぎます。ありがとうございます!また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です!!完結おめでとうございます!新作が出たら1番に応援しに行きますね!素敵な作品を有難う御座います!! (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっと | 作成日時:2020年12月5日 14時