前日7 ページ19
「A、ちょっと顔赤いよ」
我に返れば、悟の顔がすぐ近くにあった。
息を飲んで、目を瞬かせているうちに、悟が大きな手を私に伸ばす。
私の左頬に手の甲でそっと触れ、撫でた。
クールでいつもどこか冷めたような蒼の瞳が、熱を帯びているようだ。
あ、やばい。捕まる。
思わず、反射的に目を逸らした。
「飲みすぎたかなぁ」
誤魔化すように、呟く。
悟の手の甲はひんやりして気持ち良い。
私の頬は確かに上気しているようだ。
悟が触れてない方の頬を触って確認するフリをする。
逸らしていても、横から感じる視線。
彼の顔がすぐ近くにある。
息遣いまで感じれそうな程、近く。
心臓、おさまれ。
冷静、冷静、冷静。
唱えていると、ひんやりとした手が離れていく感覚がした。
ほっとしたのもつかの間。
今度は彼の右手が伸びてきて、手のひらが私の左頬を包み込む。
優しく、でもしっかりした力で、悟の顔の方に向かせられる。
今度は避ける事ができず、ばっちりと目が合った。
じっと私を見つめる蒼い瞳は、何かを仄めかすようで、熱い。
捉えられそうだ。
心臓がどくどく早鐘を打つ。
何これ。ヤバい。
相手は、悟のはずだ。
こんな事になりっこない。
思って、ふと気付いた。
この微妙な関係に、ずっと嘆いていた。
でも、私は変わらない事に高を括っていたと言えるかもしれない。
見つめてくる彼の顔は、余裕そのもの。
白くて長い睫毛が綺麗だ。
目線を逸らせない。
逸らしたいのに、悟の優しい微笑みがそれを許してくれない、気がする、何となく。
手のひらで私の頬をすっぽり包みながら、彼の親指が私の下唇をつぅと撫でた。
ずっと私の目を見つめていた瞳が、指の動きにあわせて私の唇を見つめる。
顔が熱くなるのが分かる。
悟が、甘い。優しい。
お酒のせいもあって、頭がとろけそう。
身体や感情は、彼の突然の行動に甘く反応する。
雰囲気に流されてしまいそうになる。
一方で、私の脳は冷静に論理的に分析をする。
家で男と2人で晩酌、しかも、よく考えれば相手は飲んでない。
悟とは当たり前すぎて、完全に油断してた。
どうしよう。
この先まで進んでしまったら。
どんな関係に行き着くのだろうか。
例えば、ただの一度きりの過ちでした、なんてそんなんで終わってしまったとしたら、どうだ。
この10何年の間、絶妙な距離を保ってきたというのに、そんな中途半端な関係は、絶対イヤだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます！自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…！嬉しすぎます。ありがとうございます！また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (
レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です！！完結おめでとうございます！新作が出たら1番に応援しに行きますね！素敵な作品を有難う御座います！！ (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゃっと | 作成日時：2020年12月5日 14時
