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2年前のあの日 別目線編2 ページ13

「一緒に居て落ち着く、とか。」

「一般人なのも、世界が違って逆に良い気がしない?なんか、こんな殺伐とした世界じゃないしさ。」

「それに·····好きって言ってくれて素直に嬉しかったしね。」

「何すか、ノロケですか!幸せ者じゃないっすか!」



茶化すAの同僚の声すら、憎く感じてしまう。



何だ、それ。

苛立ち、焦燥、嫉妬。
どす黒い感情が、胸の中で渦を巻くようだった。



「だから、今日は私、絶対早く帰んなくちゃなの!お祝いしてくれるって言ってたもん。」






Aの弾むような声を聞いていられなくて、背を向けてそっとその場を離れた。



まさか、Aにすでに相手がいるとは完全に想定外だった。

読みが甘かった。


確かにAの想いに気付きながらもそれ以上の関係に敢えて踏み込んでこなかった。



どこかで高を括っていたのだろう。

Aが自分以外の男の所なんか行く訳ない、と。


僕の想いが変わらないように、Aの自分への想いだって変わらない、と。

どうやら、傲慢だったようだ。





「それに·····好きって言ってくれて素直に嬉しかったしね。」




ぼんやりと廊下を歩いていると、蘇ってくる声。


殺伐とは無縁な世界で生きていて、好きだと言える関係、ね。


確かに、自分は、その一線が越えられなかった。






あてもなく歩くが、何もする気になれない。
仕方ない、こういう時は。


「硝子、ちょっと休ませてー」

書類らしい物に目を通していたらしい硝子が、振り返った隙に珈琲の缶を投げ、ベッドに転がる。



「·····珍しいな、何かあったか?」

「やばいんだ、今。人を呪う気持ちが分かるかも」


両手で顔を覆えば、「やばいな」と硝子が頷く。

ベッドの上で伸びをした。

この時間に昼寝したらさぞ気持ち良いのだろうが、生憎そんな精神状態にない。


理由を聞くことなく、硝子は再び書類に目を通し始めていた。
気遣いが有り難い。


彼女がプルタブを開ける音が聞こえたのをきっかけに、切り出した。



「硝子は知ってたんだろ?」

「ん?」

「Aに彼氏できたの」

「·····まぁな。でも本当に最近の話だよ。私も聞いたばっかりだ」

「ふーん、そう」


缶コーヒーを傾けながら、彼女が言う。

「A、お前には言ってなかったんだな」


「何もだよ。何であんな知り方しなきゃいけないんだ。ほんと最悪」


僕が愚痴るのを、硝子は黙って聞いている。

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設定タグ:夢小説 , 呪術廻戦 , 五条悟   
作品ジャンル:アニメ
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しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます!自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…!嬉しすぎます。ありがとうございます!また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です!!完結おめでとうございます!新作が出たら1番に応援しに行きますね!素敵な作品を有難う御座います!! (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゃっと | 作成日時:2020年12月5日 14時

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