【短編集】終わりと始まり【2j3j】

もう少しだけ　|kzh ページ15

「ごめん、行かなくちゃ」


今日は葛葉が魔界へ帰るらしい。いま、魔界が荒れてるらしくて、葛葉はそれを止めるためにも戦ってくるとのこと。

「…無事でね」


「…おう」


心配は心配だけどここで行かないでなんて言って困らせてしまってはならない。


「好きだよ、ずっと」


「いやなに急に」


「ん、なんでもない、いってらっしゃい」


普段は言わないことも少しだけ会わない時間があるだけなのに寂しくなっちゃって伝えた。


「…じゃあ。」


「じゃあ、またね」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

荒れた魔族たちに対応し続けてから、1ヶ月くらい経っただろうか？
わからないけれど、もうすぐで帰れそう。

思っていたよりも酷かったので時間がかかってしまった。

あともう少しで乱闘もおさまるだろう、平和になるだろう。

はやくAに会いたいなんて柄にもないことを思ってしまう。


「葛葉！こっちはもう大丈夫そうだよ」


「だからもう、大切な人のところに戻ってきな、時ははやいんだよ」



仲間にそういわれたが最後を見届けないのもなんだかなあとか思って結局全部済むまでいた。


すべての魔族を抑制して一件落着。
戻らないとなと思い、家族に少しだけ会ったあと、人間界へ戻った。
なに話そうなんて考えながら。


だけど。


「A…？」


彼女の家についたものの彼女の姿が見えなかった。
仕事とかいうやつなのかもしれないと思って気長に待つことに決める。


その時にふと見た、カレンダー。

それは俺が人間界を去った日から何百年も経過していて。


忘れていた、魔界と人間界の時間の進み方。


「しまった…最悪だっ」


そう思ってももう遅いことには変わりない。

だってもう、彼女は死んでるから。人間は百年以上生きるのは困難だから。


もう少しだけ、もう少しだけ長くいれたなら、もっと想いを伝えられていたのかもしれない。あの時言われたようにすぐに会いに帰っていたなら。最後、あの時に俺も好きなんて言えてれば。


「…っ」


彼女はこの世を去る時俺のことを想ってくれていたかもしれないのに。


「…これだからっ、人間は」


涙声で一人つぶやく声も虚しく響くだけだった。

希望　|kid→←この勝負、勝った　|kne

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