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「こんちゃーっ!」
「Aちゃんおる?あ、いた」
「あっ、は、はい。よ、ようこそ、お越しくださいました……」
「そんな固くならんでもええって!元気そうで良かったわ〜」
「アホ、距離詰めすぎや。ビビってもうてるやん」
相変わらずこの双子は騒がしい。騒がしいというよりは仲がいい、と言った方がいいのだろうけれど、その賑やかさに毎回精力を持っていかれるこちらからすれば、そう例える他ない。
今回の東京遠征だが、私は行けない、と告げると、そのことを伝えられていない一、二年生は驚愕で固まってしまった。元々三年生には伝えていたのだが、最近忙しかったから他の皆さんに伝えるのをうっかり忘れてしまっていたのだ。
影山くんにすら伝え忘れていたから、彼の機嫌はぐんと下がった。帰り道の時間をほぼ全て使って機嫌取りに成功したのだが、流石に私も反省した。
「なっ、何で!?」
「い、いえ、私、諸事情あってその二日間は旅館に居なければいけなくて……」
その諸事情というのがこれだ。
兵庫の本館、そのお得意様がお母様のお友達なのだ。一年に一度だけ、そのお得意様が分館へわざわざいらっしゃるのだが、その時にお土産とばかりに着いてくるのが、この双子の息子さんである。その対応をするのは、いつも私なのだ。
「今回は部屋どこなん?」
「え、ええと、侑さんと治さんは、鹿の間と聞いています……」
「あ!またさん付けやん!」
「ほんまや。あかんやろ、呼び方ちゃうで」
私の両隣をピッタリとマークし、上から私を覗きながら彼らは楽しそうに口角を上げた。私は恥ずかしいながらも覚悟を決めて口を開く。
「あ、侑お兄様と、治お兄様……」
「それそれ!」
「かわええな〜」
満足気に彼らは姿勢を戻して荷物を持ち直した。
彼らは最初の頃は、それはもう冷水より冷たい対応を私にしていたのだが、私が彼らの喧嘩に巻き込まれて怪我をした時から、何故か私に甘くなったのだ。
冷たいよりかは甘い方がいいと思うだろうが、溺愛と言っても過言ではない対応をされ続けるのは中々に辛い。私は甘えるのはかなり苦手なのだ。
「お兄様」と呼ばせられているのは、
「妹がほしい」
とのことだった。彼らは双子なので、余計に憧れているらしかった。
「二日しか居られんけど、Aちゃんおるからええな」
「疲れた身体に染みるわ〜」
「わ、私、どういう存在で……?」
この二人を相手にするのは、合宿より疲れることかもしれない。小さくため息をついた。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時