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その後夕方までお話しながら勉強をし、帰りにもう一つだけショートケーキを、今度は私が月島くんへとプレゼントした。彼はため息をつきつつも、私が下がらないことを見て大人しくその箱を受け取った。
「君って本当に、生きづらそうな性格してる」
「……褒め言葉?」
「……好きに受け取れば」
彼はそう言って私をわざわざ家の近くまで送ってくれた。彼のいつもの帰り道から察するに、私の家の近くまで来るとかなりの遠回りになってしまうのだが、私がショートケーキの箱を押し付けた時と同じくらい頑固だったので、大人しく隣を歩いた。
「君、僕のこと苦手じゃないの」
そんな中、ぽつりと彼がそう言ったので、びっくりして顔を見上げた。彼は私の方を見ないまま、正面をきちんと向いていた。
「ど、どうして?むしろ、月島くんが私のこと、苦手じゃないの?」
「はあ……?」
何だか私達の間に齟齬がある。二人して首を傾げてしまったが、私達は情報を元に判断するところがあるので、話していけばすぐに分かった。
「私、人見知りだし、月島くん、威圧感があるから……ちょっと言葉が詰まっちゃっただけだよ。今は怖くないから、特に……苦手だと思う人は、今のところいないよ」
「……僕と話す時だけ恐る恐る見上げてくるから、苦手だと思ってた。僕は別に、苦手とかじゃない」
「そ、そう。良かった」
こうして本人から言われると説得力がある。こういう時に嘘をつくような人ではないと思っているので、とりあえずその言葉を信じて私は安堵した。
「ていうか苦手だと思う人がいないって何?」
「そのままの意味だけれど……」
「……君、本当に『聖人』にでもなるつもりなの?」
「わ、や、やめて、そう呼ぶのは……恥ずかしい」
案外彼とこうして二人で話すことが無かったから、彼への理解度が足りて無かったのだろう。こうしてどういう人かきちんと分かってしまえば、特に緊張することもない。
普通に話す分にはつっかえもせずに話せるようになった。元々彼は話が合う部類なので、驚いたり恥ずかしかったりする時以外は言葉も詰まらない。
「じゃあ、また明日」
「はいはい」
「教えたところ出来てなかったら、影山くんと一緒に、お説経ね」
「はあ?絶対嫌」
「あははっ。うん、頑張って」
軽口を叩いてもきちんと反応してくれる。優しい上にノリもいい方だ、と脳内の月島くん情報に書き足した。
彼はため息をついてから少し口角を上げ、くるりと来た道を戻って行った。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時