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「つ、月島くん……あの、これは……」
「うるさい、使えるものは使った方がいいデショ」
「そ、それは、そうかも、しれないけれど……」
月島くんに連れてこられた店内に入るなり、店員さんが、
「カップルですか?割引つけますね」
と言ってしまったが為に、私達はカップルのフリをしなければいけなくなったのだ。
月島くんはケーキが安く買えるならとすぐさま愛想笑いを浮かべたし、いつもの彼では有り得ないほど気さくに私の肩を抱く。
まあ彼がいいと言うならいいのだろう。知り合いに合わなければいいだけの話だ。私なんかが月島くんの恋人という誤解はされてはならない。彼に迷惑なだけだ。
それにしたって嘘はどうかと思うのだが……。私は嘘をつくのは比較的得意でも、嘘をつくのは嫌いなのだ。どうしても店員さんを騙しているのがいたたまれなかったが、店員さんは私が恥ずかしがっているだけだと勘違いなさっている。更に申し訳なくなった。
「そ、それで、どれにするの?店内で食べるか、持ち帰るかはお任せするけれど……」
「店内で」
ショーケースに入ったキラキラと光るスイーツに、どうやら待ちきれなくなったらしい。かなりの即答だったので、少し笑ってしまった。ショーケースに釘付けになっている彼にそれがバレることは無かった。
「私もひとつ頂こうかな……タルト、美味しそうだし」
「どれ」
「えっ、右にあるフルーツタルトだけど……」
彼の袖を引いて自分のほうに寄せ、同じところを見るように小さく指を指した。彼は少し固まった後に分かった、と私から少し離れた。見えにくかっただろうか、と思っていると、彼が店員さんを呼んだ。どうやら決まったらしい。
「ショートケーキと、フルーツタルト一つお願いします」
オススメしてみたフルーツタルトが採用された。ショートケーキは彼の好物だと昨日山口くんから聞いていたので、そちらはあまり驚かなかった。
鞄からお財布をだしていると、店員さんが、
「お席にご案内しますね」
と言ってきたので、まだお会計が、と言いかけると、
「ありがとうございます」
と、これまた猫を被った月島くんが微笑んでしまうので、まさかと彼の顔と手元を見た。
「つ、月島くん、約束が違うよ」
「何、まさか本当に奢らされると思ったの」
「だ、だって、お礼だもの」
「だから、お礼して」
他のことでお礼して、と言いたいらしい。一体何だろうか、と思っていると、彼は教科書を取り出した。なるほど、と私は頷いた。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時