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「そう言えば、皆の連絡先知らないな」
そんな言葉を切り口にして勉強会は終了した。影山くんに限って言えば、とりあえず古典については問題なさそうだ。ほとんど暗記になってしまうが、最悪でも今回の窮地さえ脱すればいいので、深くは追求しないことにした。
山口くんも不安だと言っていたけれど、私が見る限り特に問題は無い。理解は早いしきちんと基礎が出来ている。これがあるべき学生の姿だよ、と影山くんをからかうと、彼はむっとして黙り込んでしまった。
そんな状態でも、きちんと謝れば彼は許してくれる。彼のいい所で私が好ましく思っているところだ。
「からかってごめんね。許してくれる？」
と言うと、まだ不満の残る顔で、しかし頷いて許してくれた。基本的に彼はいい子なのである。だから私は彼に嘘が付けない。
「じゃあこれ！」
「そいつらが何かしたら連絡してね」
「するか！」
「てか出来るか！」
「お前ら扉の前で騒ぐなー閉めるぞー」
荷物を纏めて部室から出ると、夏だと告げるように虫の声がした。涼しげだが、気温はそこまで涼しくない。梅雨明けだからか少しじめっとしていて気持ち良くはない。
もしかしたら私がタイツを手放さずに着用しているから余計にそう感じてしまうのかもしれない。でも素足を出してスカートを履くのは私にはハードルが高い。
元々スカートは防御力が低すぎるのだ。だってただの布だし。タイツを外せばそりゃあ涼しくはなるだろうが、どうしても羞恥心というものがある。このスカート丈だってかなり勇気がいるのだ。私は規定よりも長くしている。
とにかく、そんな風に皆さんの連絡先を貰ってしまったので、帰ってからどさどさと携帯につめていくことにした。歩きながら携帯を触るのは危ない。風邪を引いた後に事故や事件にあったら目も当てられない。
「……何だか、不思議」
「は？」
私が首を傾げながらそう言うと、影山くんも釣られて首を傾げる。私は気にしないで続けた。
「私、ここに来るまではこんなに知り合いやお友達が増えると思わなかったから……、携帯電話の番号をこんなにもらうのも、何だか現実味がないの」
鞄を持ち直すとカサリと朝にはなかった音が鳴る。不思議で仕方ないけれど、同時に嬉しくもあった。
「……いいんじゃねえの」
「え？」
パッと顔を見上げると、彼は珍しく眉間の皺をとって柔らかい表情をしていた。決して笑顔ではないけれど、笑顔と同じくらい緩んだ顔だった。
「お前が、楽しいなら」
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (
レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ReG | 作成日時：2022年3月22日 15時
