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「それ一々巻いてるの?」
今日も昨日と同じようにポニーテールで青城のお仕事をする。ドリンクを他の部員さんと運び終わると、ぬっと後ろから及川さんが私を見下ろした。
「……いえ。普段三つ編みなので、解くとこうなるんです」
「へっ、へえ〜、そ、そう」
自分から聞いてきたくせに挙動不審だ。本当に謎である。しかもまだ私の目をきちんと見ない。それを抜きにしたとしても、彼は私のお友達を悪く言ったままなので、あまり積極的に会話したくは無かった。
「あ、え〜……と」
「……?」
「にっ、似合ってないけど!?」
「あ、はい」
さらりと受け流して岩泉さんに「お疲れ様です」とドリンクとタオルを渡す。岩泉さんは慣れたように「おう」と言って受け取り、そのまま及川さんの頭をぶった。いい音が鳴って少し心配になる。私が彼を苦手だからといって心配しない訳ではなかった。
「お前そんなこと言うだけだったら黙ってろ」
「いったいよ!毎回グーでぶつのやめて!」
「はい神風ちゃんカモン」
「あ、す、すいません。ドリンクとタオルですね」
「そうじゃないけどそれでいいや」
慌てて松川さんと花巻さんに駆け寄ると、にこやかにお礼を言われる。彼らはこの中でもいちばん大人びて見えるので、ちょっと緊張した。悪い人ではないということは昨日の帰りの時点で分かっているけれど。
「あ、あの、及川さん、大丈夫なんですか……?」
「健気だなあ、心配するだけ無駄だって」
「ほっといて俺らとお話して」
「ちょっとマッキー、近いよ!離れて!」
何故及川さんが指示するのだろう。というか殴られていたところはもう大丈夫なのだろうか?とんだ石頭だ。
ちらりと彼を振り返ると、ぶたれたのは顔面じゃないかと錯覚するくらい頬を赤くしてこちらを見ていた。
「えっ、と、とりあえず離れな!何されても知らないよ!」
「神風ちゃん、あいつのことをどう思う?」
「……な、謎、ですね」
「言われてんぞ謎野郎」
「嫌だ!そんなダサい渾名は嫌だ!」
烏野と共通しているところはこの賑やかさなのかもしれなかった。これもコミュニケーションだと分かっているからか、監督やコーチもあまり注意しないスタンスのようだ。元々選手達が考えて試合を動かしていたチームだからこそ出来ることなのだろう。
少し考え込んでいると、及川さんが私の前に立つ。見上げると、目をうろうろとさせながら、未だに赤い顔で口を開いた。
「か、か、可愛いんじゃないの!」
「はあ、どうも」
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時