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ぬっ、と後ろから影が重なる。その声にびっくりして肩が跳ね上がったが、彼にも言わなければいけないことがあったのだ。ゆっくり振り向いている間に息を吸った。
「こ、こんにちは、牛島さん……か、烏野高校一年、男子バレー部マネージャー、神風と申します……。か、彼らが、ご迷惑をおかけしたようで、すみません」
自己紹介と共に謝罪の言葉を乗せて頭を下げると、「構わない」と堂々とした声がした。佇まいから何から風格があると言えばいいのか、とにかくどっしりとしていた。流石三本の指に入るエースと言われるだけある。
「そ、それで、あの、これ……恐らくロードワーク中に、チームメイトの誰かが落としたと思うのですが、お渡しして頂いてよろしいですか……?」
「……ああ、受け取った。助かる」
「い、いえ……」
後ろにいる影山くんからビシビシと視線を感じるので、早く切り上げてしまおうとタオルを渡し、牛島さんに頭を下げて去る。彼はそんな私に特に何も声をかけてこない。地味な私は彼になんとも思われていないらしかった。
ということで、軽くお説経だ。
「さっきも言ったけれど、他の学校に入る時は許可を貰わないと……何かトラブルがあった時に困るのは二人なんだよ。あと、運動するのはいいけれど、谷地さんに心配をかけさせないでね。凄く心配してたよ」
「は、はい……」
「…………」
「影山くん、お返事は?」
「……分かった」
「ぜってぇ分かってねえじゃん」
「うるせえ」
「喧嘩してもいいけれど、お説経が増えるだけだよ」
すん、と二人していがみ合うのをやめて私を見た。後ろで牛島さんが見ているのだから、説教の場面など見せたくないのだ。この二人には無理かもしれないけれど、大人しくしていてほしい。
「それより、神風さん、何で着物?」
「えっ?あ、ううん、普段着が着物なの。洋服はお出かけする時しか着なくて……」
「すげえ!大和撫子?って感じ!」
「あ、ありがとう……」
褒められたからではないが、説教はそこそこに帰ることにした。谷地さんに連絡を入れなければいけないし、説教したところで彼らは本能に従って動くところがあるから、あまり役に立たないだろう。
駅前の方向に向かって歩き、日向くんと影山くんに暗記科目の問題を出しながら先導する。着物だからかいつもより歩く速度が遅かったけれど、二人は文句を言うことなく着いてきてくれたが、それは私が出した問題の答えをずっと考えていたからかもしれなかった。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時