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「お前より神風ちゃんと仲良くなったし、今日は譲ってあげるよ!及川さんは優しいからね!」

という捨て台詞を吐いて、岩泉さんに拳骨をくらった及川さんは引きずられて帰って行った。岩泉さんは相変わらずクールで、

「悪ぃな影山、神風。気をつけて帰れよ」

とだけ言い残して及川さんを怒鳴りながら足を進めていた。それを取り残された私達はぽかんと見て、「岩泉さんは凄い」という共通認識をした。

「……神風」
「うん?どうし」

たの、と言い切る前に、彼は未だ掴んだままの私の腕を引いた。いつもよりも強く引かれて、足がもつれて彼の方に倒れ込んでしまった。そんな事では彼の体幹は揺らぎはしないけれど、少し心配になった。

「……ど、どうしたの。そんなに、眼鏡外したの、気に入らなかった?」

慌てて彼から離れ見上げると、少し不満げな顔が私を迎えた。確かに約束していないとはいえ、一度自分で言ったことだったからそれを貫かなかったことに彼は不満を持っているのかもしれなかった。

「……行くぞ」

彼はそれに何も答えず、そのまま私の腕を離さずに図書館の方へと歩き出した。一体何が琴線に触れたのか分からなかったが、とりあえず彼が何も答えないなら放っておいてもいいだろう。

いつもよりも歩幅が大きくて、図書館の手前の信号までずっと早歩きになってしまう。赤信号の時にそれに気づいた影山くんは、ようやく私の腕を離した。

「……及川さんの」
「うん」
「及川さんの方が、俺より、仲良いのか」

ぽかんとして彼を見上げる。未だ不満そうに眉が顰められていて、けれどその目だけが不安そうに揺らいでいた。
まさか、彼は及川さんのあんなからかうような言葉を真に受けて、だからずっともやもやしたまま私の腕を引っ張っていたのだろうか。

「……ふっ、あははっ」
「は!?な、何だよ」
「ううん、まさか……あは、影山くん」

本当に可愛い子だ。彼が末っ子なのが凄く腑に落ちる。

「そんなことないよ。影山くんが一番仲良いお友達」

そう言葉にすると、信号が青に変わった。彼は少し立ち止まってからふっと顔を緩めて一歩を踏み出す。雰囲気も柔らかくなっていて、もう気にしていないらしかった。

「……あ、でも、男の子のお友達の中で、かな。今は弥生ちゃんがいるから……」
「あの猫女か」
「影山くんは苦手みたいだけど、いい子だよ。あと、きちんと名前、覚えてね」
「ぐ……」
「今からするお勉強より、難しくないよ」

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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時

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